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33話 日本インベルド平和友好条約

 

 血まみれとなった城の中庭で、一人の男が無線へ話しかけていた。


「こちら、石田。城の制圧に成功したぞ」


 内容は吉報であるはずだが、そう報告する石田はなんとも言えない顔をしている。


『うむ。随分と簡単に終わったな?損害はどれ程出たんだ?』


「怪我人が四人出た。以上だ」


『………それだけか?敵の本拠地ともなるとそれなりの部隊が居るはずだが死者すら出ないというのはありえんぞ?』


「ああ、その件なんだがな。大半を逃がしてしまったらしい」


『なんだと!?』


「仕方ないだろう。相手は剣や弓しかないとはいえ、それでも危険だからな。慎重に少しずつ城を制圧させたが、どこももぬけの殻だったよ。まともに戦う気のあるやつは、真っ先にこっちへ来て殺されたんだろう」


『逃がした連中はどこへ?』


「おそらくだが、近くの村や町、あるいはこの都市のどこかだろうな」


 そう言いながら、城壁へと階段を上っていく。


『それは不味い………インベルド王国の民間人に被害が出る可能性が高いではないか』


「可能性が高い、ではなく確実に出るだろうな」


 ひょうひょうと石田がそう言うと、無線越しに怒鳴り声が聞こえてくる。


『何を無責任な!ふざけるなよ!』


「だったら城ごと派手にやれば良かったじゃないか」


『インベルド王国の上層部ごと死んでしまったら事態の収拾がつかなくなるだろう!』


「そうかい。まあ、国王と宰相は確保したから良いだろう?じゃあ報告は終わりだ」


『おい、待て!ま』


 一応上司であるはずの相手を気にもせず、石田は無線を切ってしまった。そして階段を上り切り、城壁から眼下の街並みを見下ろす。


「本当に中世レベルなんだな………」


 ―――――――――――

 インベリア―ロ城 王の間



「では、この紙に署名をお願いいたしますね?国王陛下」


 ズックルとゴルミフの二人に、葉名外務大臣が詰め寄っていた。


「ぶ、無礼な!たかが女が、舐めるなよ!」


 そうズックルが激昂するが、周囲に居る自衛隊の隊員が身構えると顔をゆがませながらも黙り込む。形式上は対等であったが、実際の両者の上下関係は明らかであった。


「へ、陛下。落ち着いてください、今の我々は従うしかありません………」


 ゴルミフがズックルを咎める。


「く………分かった。この紙に署名するのだな?」


 ズックルも馬鹿ではない。彼自身今置かれている状況をよく理解しているだろう。


 スッスッと音が響く。


「こ、これで書き終わったぞ」


 ズックルがそう言うと、葉名が満面の笑みで話し出す。


「たった今、日本インベルド平和友好条約が両国の間に締結されました。このような悲劇がまた起きないように、これからは友好的な関係を築いていきましょう!」


「あ、ああ………」


(小娘め、ふざけるなよ!)


 こうして、日本インベルド平和友好条約が結ばれた。ただし、その内容は日本に極めて有利な内容であった。





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