21話 クラーケンロード洋海戦①
都市ソラーロに面するクラーケンロード洋。この海域にはかつて、クラーケンの王が出現し、猛威を振るったと言う伝承が残っている。そんな海域を、第一護衛艦隊群と輸送艦部隊のの計十隻が、悠然と進んでいく。
その十隻の旗艦である、護衛艦【いずも】。この艦は転移後、安全保障の不安が生じたことから急ピッチで空母化されていた。
「まったく、なんだってわざわざ給油機を派遣してまで初撃にF15Jを使ったんです?この艦に乗っけてるF35を使えばいいじゃないですか」
そう艦橋でぼやいたの若い女は、艦長の早沢である。
「仕方ないさ。空母化して直後の任務なんだから、練度とかいろいろ信用されてないのだろうよ。それに乗っけてるのも本当は米軍の戦闘機なんだからな………」
群司令の田沢がそのぼやきに的確な返答をする。
「まあ、そうですよねえ………」
今回の対インベルド作戦に、いずもの空母化こそ間に合ったものの、艦載機のF35Bは全く用意できなかった。そのために、転移後愛知の整備拠点に残っていたF35Bを借りパクしているのである。
「航空自衛隊から連絡が入りました!敵の航空戦力を撃破し、制空権を確保したとのことです」
通信係の一人がそう大声で伝える。
「………我々の出番が来たようですね、群司令」
「この艦は出番ないと思うけどねえ」
格好つけようとした早沢に、田沢が冷静に水を差す。
「ちょ、それは言わないでくださいよ」
「だってそうじゃないか。まあそんなことはどうでもいい。………よし、全艦隊はむらさめ・いかづちを先頭にソラーロ付近まで移動せよ!」
「こ、こんなのあんまりだ………」
艦隊が動き出した。
次話も明日午後六時過ぎ。




