13話 葉名の策略
「滅ぼされている………だって?」
亜草副総理が少し驚いた様子で葉名に話しかける。
「ええ。クラート王国によれば半年前、インベルド王国にリマ国は侵略され、事実上滅んでいるそうです」
「ふむ、ではインベルド王国と石油の輸出について交渉するわけかね?」
「いいえ。これもクラートからの情報なのですが、インベルド王国はかなり侵略的かつ排他的な性質だそうで交渉は難しいと思われます」
二人の会話に金星経済産業大臣が、
「ということは、結局石油の確保はほぼ不可能な訳ですか………」
と割り込む。やや芝居がかった様子で落ち込んだような雰囲気をしている。
「そんなことはありません。話は変わりますが、我が国は前の世界においてPKOなどで国際平和に貢献してきていますよね?こちらの世界でも何らかの形で国際平和へ貢献していくべきでしょう」
「まさか!?そんなことをしたら専守防衛に反するだろう!」
川野防衛大臣が葉名が何を考えているかを察して制止しようとする。だが、葉名は止まらない。
「いいえ。インベルド王国を名乗る、巨大なテロリストを鎮圧して、リマ王国に援助をするだけです。そのお礼に石油の採掘権をもらう………憲法九条には何も違反していませんよ?」
「馬鹿なことをいうな!」
「戦争を仕掛けるのと何も変わらんぞ!!有り得ん!」
「それは詭弁だ。そんなふざけた考えには反対させてもらおう」
多くの大臣がそれぞれ反論をする。しかし、賛成する者も居た。
「経済産業大臣としては、賛成させていただきます。石油の供給が安定化すれば混乱も多少はましになります」
「彼女の提案、なかなか面白いじゃないか。うまくいけば、石油を他国に頼らずに済む。どうだい須賀君。やってみる価値はある」
亜草副総理と金星経済産業大臣である。こうなると、もう結論はなかなか出ない。要職である、副総理、経済産業大臣、外務大臣がこの案を推し進める一方で、防衛大臣を筆頭に多くの大臣が反対に回っている。こうなると、最後に判断を求められるのが総理大臣だ。
「総理、私の案を採用お願いいたします。これからの我が国の発展のためには必要な一手です」
「総理!防衛大臣としては、自衛隊を本来の役割から外れた運用をしようとする彼女の案に賛成できません!」
葉名と川野、二人の主張はどちらも理にかなっている。では、須賀はどちらを選ぶのだろうか?
次回は明日の六時くらい。




