彼の能力
??「貴方が、お嬢様の言っていた外来人ですね」
目の前にいる赤髪の女性は、僕の前に立ちはだこうと僕の行こうとしていた道の目の前に高速で移動した。
甘堕「なんのつもりですか……」
僕は、警戒しながらその人に問う。
赤髪の女性「なんのつもり……か。強いて言うなら、貴方の手助けと言った方がわかりやすいでしょうか?」
??「その通り、私たちは別に貴方の敵というわけじゃないわ。貴方は今、きっと紅魔館に向かおうとしてるわよね?でも、今の貴方では霊夢たちや咲夜の手助けは愚か、足手まといにしかならないわ」
赤髪「その通りですね」
??「別に行こうとすることがダメとは言っていないわ。ただ……今の力もない貴方が紅魔館に入ったら確実にヤバイわ。だから、そのためには貴方の力を試さなくてはならないわ」
甘堕「試す…?」
紫の髪をした少女のその発言に、疑問符を浮かべる。すると、赤髪の女性はいきなりこんな事を呟いた。
??「にしても驚きましたね、いきなり後ろから扉が出てきたと思ったら、貴方が出てくるもんですからね」
甘堕「扉……?」
そういえばアレってなんだったんだろう。だが、今はそんな事を考えている暇はない。今の僕は、霊夢達の力になりたい、ただただその一心で動いているのだ。だから僕は、その人に立ち向かうために構えを取る。
??「どうやらやる気になったようですね」
甘堕「はい。あなた方の言う通り、僕には霊夢たちのような能力も力もありません。ですが、それでも……僕はここを突破して、霊夢たちの手伝いがしたいんです!」
??「……いいでしょう。その心意気を見込んで、私も多少本気を出す事にしましょう。私の名は紅美鈴!あの赤き館の最強の番人だ!!」
甘堕「行きますよ、美鈴さん!!」
そうして、僕は彼女に向かって走り出す。どんどんと距離を詰めながら、右手を引いて拳を突き出す構えをとる。そして、タイミングよく、素早く、僕はその拳を思いっきり放った。
……だが。
美鈴「おそい!」
僕の拳が届くよりも先に、彼女の足技が綺麗に腹に命中した。僕は近くの木に叩きつけられて、さっき蹴られた腹を摩りながら頑張って立ち上がる。
彼女は手を前に出して、くいくいっとさぁ来いと促す。僕はまた、彼女に向かって走り出して行く。今度は足に気を付けながら、彼女を円を描くように走って囲いながら、隙が生まれるのを待つ。背中がガラ空きだった彼女の様子を見て、背後から回し蹴りを行おうとして……。
美鈴「てやぁ!!」
甘堕「っ!?」
それを綺麗に受け流されてしまい、僕は一瞬体勢を崩しそうになって、そしてそれを狙ったかのように彼女は追撃を仕掛ける。なんとか防御をしたものの、全く軽減できた気がしなかった。体がじんじんと痛む。
美鈴「どうしましたか?貴方の力はそんなものですか!レミリアお嬢様は、今回のこの異変の解決に、貴方が必要だと言っていました!」
甘堕「……レミリアさんが?」
美鈴「お嬢様に期待されてる以上!貴方はその期待に応える義務があるのです!!」
「目を瞑り集中しなさい、自分の体の中心を意識しながらただひたすらに集中し、そして、今こそ引き出すのです!貴方の内にあるその力を!能力を……!」
甘堕「……わかりました」
言われた通りに、僕は目を瞑って集中する。自分の体の中心を意識して中心に力を溜め込むつもりで集中する。すると瞬間……。暗闇だった視界が、刹那白く変わていく。それに驚いた僕は、思わず目を見開いた。
??「……どうやら、うまくいったようね」
紫の髪をした少女が、ボソッと何かを呟いたような気がしたが、気にせず僕は美鈴の方に向き直る。なんとなく、今ならなんでもやれそうな……そんな感覚を感じていた。勝てるかどうかはわからないが、今の僕には何故かなんでもできるようなそんな感じがしていたのだ。だから、僕は……こう宣言する。
甘堕「次で最後にしましょう!お互いの力の全てをぶつけて」
美鈴「わかりました、ならば私も能力を使って存分にやりましょう。この一撃を持って……」
鳥が飛び立った音を合図に、僕らは動き出す。美鈴の周りには、何か力を纏ったようなオーラのようなもの出しながらこちらに向けて接近する。それに対抗すべく、僕も全速力で近づいて行く。
ーーさぁ、今こそ目覚めよーー
その瞬間、僕の体は軽くなったかのようにスピードが上がり、自分でもわかる具合に拳にさらに力が入る。これが、僕の能力。僕だけの唯一の能力。
「目覚めさせる程度の能力」
……そうして。
僕と美鈴は思いっきり衝突して……。僕は彼女の一撃を避けて彼女に向けて渾身の一撃を与える事に成功した。美鈴は、僕に攻撃されたところをちょっと痛そうに抑えながら。
美鈴「どうやら、上手くいったようですね。これが、貴方の力というわけですか……。たしかに、これは強力な能力ですね」
??「おめでとう、甘堕乱。貴方は無事、自らの能力を開花させる事に成功したわ。まさか、ただの人間が…しかも、能力を解放したばかりの人間が本当に美鈴に勝ってしまうだなんて……」
甘堕「ありがとうございます。あなた方がいなかったら、きっと僕足手まといになってみんなの迷惑になってましたから。えっと〜……」
??「パチュリー・ノーレッジ。パチュリーでもノーレッジでも好きなように呼んでちょうだい」
甘堕「あ、はい。パチュリーさん、ありがとうございました!美鈴さんも……」
美鈴「いえいえ、私はただ貴方と戦ってただけなので、そんな特別何か誉められることをしたわけじゃありませんのに……。まあ、どういたして」
パチュ「ほら、そんな事よりも。早く行きなさい。霊夢と魔理沙はもう、もうだいぶ前から紅魔館に入って行ったわよ」
甘堕「あっ、はい!それじゃあまたー!!」
そう言い残して、僕はその場を後にするのだった。
□□□美鈴視点
美鈴「いやぁ〜、まさかあそこまで強くなるとは……。人生何があるかわかったもんじゃありませんね」
パチュリー「まあ、今回のこの勝負は。甘堕の内に秘めた力を引き出すための戦いだったからね。手加減をしてやらないと、もしかしたら貴方の蹴りだけで死ぬ可能性がありますからね」
美鈴「まあ、だからわざと負けたんですけどね」
パチュリー「あら、てっことはさっきの甘堕の一撃を受けたところを痛そうに抑えていたのも演技だったわけね」
美鈴「え??」
パチュリー「なら、回復は必要ないわね」
美鈴「えー!ちょっと待ってくださいよパチュリーさん!あの戦いが終わったら回復してあげるって言ってくれたじゃないですか!!」
パチュリー「だって貴方、だいぶ大丈夫そうだから、もういいかなって……」
美鈴「良くないですよ!」
などと、そんな会話をしていると。
??「あの〜……」
背後から見知った声が響き渡って来た。私たちは、声がした方向に一斉に振り向いた。
パチュ「あら、小悪魔。お帰りなさい」
美鈴「あ、小悪魔さん。帰ってきたんですね」
小悪魔「あの、一つ良いですか??」
パチュ「何かしら?」
小悪魔は一拍を置いて、こう私たちに告げるのだった。
小悪魔「私の出番って、ないんですか??」
二人「……あ」
と私たちはその言葉に、何もかけてやる事ができなくて、思わずそんな素っ頓狂な声が漏れるのだった。
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