幻想的な世界 幻想郷2
気絶から目覚めた僕は、とりあえず目の前にいる女性に目を向けていた。霊夢という少女から聞いた話だと、隙間妖怪の賢者……らしい?霊夢はそう言っているが、イマイチピンとこないのが、今の僕の頭の現状である。
隙間妖怪「え〜〜っと……」
と、一拍を置いてやっと口を開き始める隙間妖怪の女性。
隙間妖怪「まずは、自己紹介をしておいた方が良いわね。」
って、唐突にそういう隙間妖怪。まあ、僕はこの人達の事をまるっきり知らないので、自己紹介をしてくれるのは、個人的には嬉しい限りである。
隙間妖怪「まずは私から言わせてもらうわね?」
と、言って傘と扇を持ちながら、その隙間妖怪は大人ぽく優雅に自己紹介を始める。
隙間妖怪「私の名前は八雲 紫。隙間妖怪であり、この幻想郷の賢者として管理を務める者よ…。」
僕「ん?幻想郷??」
僕は、ふと疑問に思った事を口にする。
紫「幻想郷とは、この世界の事よ。忘れ去られた者達の楽園、それが幻想郷……。」
と幻想郷という世界を説明してくれるが、僕は唐突すぎて頭の理解が出来なかった。僕は、意味不明過ぎてテンパる。だが、そんな僕を差し置いて話を進めようとする紫さん。
紫「まあ、後にまた詳しく説明するわ。だから、今は自己紹介を聞いていなさい。」
僕「はっ…はい。」
と、うなずく僕を確認した後、次の人が自己紹介を始める。
霊夢「私の名前は博麗 霊夢よ。幻想郷の秩序を正す、博麗の巫女よ。」
と、やる気なさそうに自己紹介をする霊夢。
僕はこの後どう反応すれば良いのか、わからないので適当に返した。
僕「どっどうも……。」
霊夢「……ほら、次魔理沙よ。」
霊夢はそのまま魔理沙の方へと振った。霊夢はめんどくさそうに欠伸をかく。なんでそんなにだらしないのだろうと、僕はそう思わずにはいられなかった。
そして、魔理沙という少女の自己紹介が始まった。
魔理沙「私の名前は霧雨 魔理沙、ごく普通の魔法使いだぜ!とりあえず、改めて宜しくな!」
僕「おっ……、おう!?」
と、僕は前に出された魔理沙の手を取り、握手を交わした。テンションがチョット高めな為、個人的には少し接し難いと思った。まあ、これで無事自己紹介が終了した。
僕は自己紹介が出来る状態じゃないというか記憶がない為、自己紹介なんて出来るはずがないのである。
まあ、本来の目的である僕の素性についてを知る為に、何か知ってそうな八雲 紫から話を聞く訳なのだが……。
紫「そうねぇ……。」
紫は、扇を煽りながら考え込む素振りをした。やがてその言葉が、紫の口から出た。
紫「ごめんなさい。貴方の事については、何一つとして知らないわ…。」
と、紫は頭を下げて謝罪をする。
僕「いえいえ、そんな気にしないで下さい。仕方ない事ですよ〜!ねっ?」
と、言って僕は霊夢と魔理沙の方を向く。
……すると、
霊夢「な〜んだ、知らないのね〜……。」
魔理沙「紫でもわからない事ってあるんだな……。にはは、なんか面白いぜ!」
なんか……、馬鹿にしているのか嘲笑っているのか、よくわからない煽りを口ずさむ霊夢と魔理沙。それは、言わなくても良くないか?っと、内心でそう呟く。
霊夢「でも……、紫が知らないとなると、アテがもうないわね……。」
と霊夢が口ずさむ中、魔理沙が何かを思いついたのか、口をニヤニヤとさせて喋り出し始める。
魔理沙「なあなあ!私に良い考えがあるんだけどさ?」
と、魔理沙は誇らしげにそう言うが、ぶっちゃけ僕には嫌な予感しかしないのである。なんでだろう?と、なんとなく自分でもそう思った。初めてなのに、なんでこんなに嫌な予感がするのか、この時の僕はまだ、知るよしもなかったのだった。
□□□
霊夢「でっ……、その良い考えって何よ?勿体ぶらずに言いなさい!」
そう言って話を急かす霊夢。まあ、確かに勿体ぶらずに早く言って欲しいから、霊夢の言葉には共感しか無いなっと、内心でそう呟きながら、うんうんとうなずく。
魔理沙「まあまあ、そう急かすなよ。この魔理沙のとっておきの方法で、お前の記憶を呼び覚ましてやるぜ!」
自信に満ち溢れたその目は、キラキラと輝いていた。だけど、いったいどんな方法なのだろうか?と、考え込んでいると、魔理沙は遂にその答えを口に出した。
魔理沙「この私の最高級の硬さ持つ[ミニ八卦炉]をお前の頭部に物理で叩くって方法だー!!」
この言葉を聞いた瞬間、僕は咄嗟にこの場から走り出したのだが、
紫「あらあら?逃げる事ないんじゃ・な・い・の?」
と、一瞬にして紫さんに逃げ道を塞がれた。いや……、縛られた。紫さんは、修羅の様な笑顔でこう言い放つ。
紫「いい?おばさんじゃなくて、お姉さんと今度から気をつける様に。わかったかしら?」
前回のこと根に持ってるんですねわかりますー。
この人怖いなぁ〜っと、そんなどうでもいい事を思いながら、魔理沙にミニ八卦炉をぶつけられて、僕の視界はだんだんと暗闇に包まれていくのだった。
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僕「……ん?」
目覚めると、僕は畳に敷かれた布団の上で眠っていた。どうしてここで寝ているのか、僕は疑問に思った。思い出そうとするが、走り出してからの記憶が全くない状況になっている。なんにもわからなかったので、僕は考えるのをやめた。
あれからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか?僕は、今の時間を確認する為に外の縁側への障子を開け、空を見上げた。そして、綺麗に輝く満月を僕はその時見た。なにか、思い出しそうになったが、僕はそれを反射的に跳ね除ける為に、首を横に振った。
霊夢「やっと目覚めた?」
背後から霊夢の声が聞こえてきた。僕はゆっくりと霊夢の方へと向き、思い出したその記憶の一部を、唐突に簡潔に僕は答えた。
僕「僕の名前は甘堕 乱。今はそれしか知らない、ただの人間です。」