幻想的な世界 幻想郷
何も見えない真っ暗な世界。その暗い世界で、僕は小さな光に照らされた。僕はその光を追いかけて……。
そして
そして
………そして。
□□□
「……んっ?」
僕は、木の幹の上で目を覚ました。周りを見渡すと、辺りは木々に囲まれていた。なぜだか分からないが、僕は木の上で寝ていたようだ。なぜそこで寝ていたのか分からないので、僕は考えるのやめた。
「にっしても……ここはいったい何処なんだ?」
と、俺が独り言を呟いていると……。近くから微かに声がした。僕は、その声を頼りにそちらの方向へと歩き出し、チラチラと日の光が差し込むところで足を止めた。
すると。
□□□
そこには、人気のなさそうな神社が佇んでいた。そして目の前の境内では、箒を持って掃除をする「紅白の服を着た少女」と、箒を逆さまに持って会話をする金髪の「白黒の服を着た少女」が居た。
白黒の少女「なぁ〜霊夢〜〜…!なんか面白いことないかぁー?異変とかさ?」
と、白黒の少女がそう話しかける。その紅白の少女は、「はぁ〜…。」っため息を吐く。
紅白の少女「あのねぇ〜魔理沙?異変を求めようとしないでくれないかしら?めんどくさいし……。」
白黒の少女「おいおい?博麗の巫女が異変をめんどくさがるなよ?」
紅白の少女「だって……。めんどくさいものはめんどくさいもの…。」
「………。」
会話の内容は聞き取れないが、こちらに気づいていないようだ。不思議な格好をした人達ではあるものの、悪い人達ではないだろうっと、判断した僕はその人達に近づいて、森を抜けるのだった。
□□□霊夢視点
私は、ふと……。ガサっ……と、草を掻き分けながらこちらに近づいてくる足音を聞き取った。その音が、どんどんこちらに向かってきている事を確認した私は、期待に胸を大きく膨らませて身構えた。
そして、その足音の正体は、遂に姿を現した。
□□□僕視点
僕が境内へと姿を現すと、紅白の少女が、客を迎えるかのような顔と、物欲しそうな目を輝かせて僕のことを見ていた。僕には、なんでこんな期待の眼差しで僕を見つめているのか、最初は意味が分からなかったが、紅白の少女の一言で、何を求めていたのかを、この後一瞬で、容易に察してしまった。
紅白の少女「博麗神社にようこそ〜♪うちの神社に参拝しにきてくれたのね。賽銭箱はあっちにあるから入れといてね。」
と、言って神社の拝殿に指をさした。
「あー……、なるほど。」
と、僕は呆れながらボソッと納得したかのように呟いた。
白黒の少女「なあ霊夢?こいつもしかしたら外界の人間なんじゃねえのか?」
白黒の魔法使いがそういうと、巫女服の少女は再度僕を見て一瞥した。
紅白の少女「確かに見掛けない顔ね……。」
霊夢という少女は、魔法使いの方へと向きなおして、そう言った。
白黒の少女「だろ!服装とか、身なりとか、幻想郷じゃ見慣れない奴だろ。」
っと、珍しい物を見るかのように、魔理沙という少女は僕を見ながらそう言った。
霊夢「はぁ〜…。な〜んだアンタ参拝客じゃないのね?なんか損したわ……。」
残念そうに顔を鬱むく霊夢。呆れながら、境内の掃き掃除続けていた。
僕がその姿見て、ぼーーっとしていると魔理沙が僕に話しかけて来た。
魔理沙「そういや、お前名前なんて言うんだ?」
僕は、魔理沙に名前を聞かれたので、すぐさま答えようとした、その時だった。
「僕の名前は………。」
「………っ?!」
この瞬間、僕の頭は一瞬にしてある感情に侵食された。
魔理沙「どうした!?顔が真っ青だぞ!?」
様子がおかしくなった僕を見て、心配の声を掛ける魔理沙。だけど、その声が僕の耳に届く事はなかった。
「僕は、誰?名前が思い出せない?分からない、僕は何者??」
名前が思い出せない、それどころか今までの記憶がまるで無い。
僕は、恐怖と焦りが入り混じって錯乱した。ぶつぶつと口を動かして、体を震わせながら、恐怖と絶望感に押された僕は、俯いた。
そして
ゴンッ!!っと……。
頭に強い衝撃が迸る。その時、一体何が起こったのか、僕は分からなかった。そして、僕の目の前で響く、一つの声があった。
霊夢「ブツブツとうるさいわね!少しは落ち着きなさい!」
真っ直ぐとした目で、霊夢はそう言った。
そう言われた僕は、深く呼吸をして落ち着きを取り戻した。
霊夢「どう、落ち着いた?」
「うん、とりあえずは……。」
と、僕は頷く。
「……その…ありがとう………。」
と、僕は小さくそう呟いた。
霊夢「アンタが病みそうになってたもんだから、正気に戻しただけよ。」
霊夢「でも……」
と、一拍を置いて告げる。
霊夢「お礼するなら賽銭を入れなさい!!」
僕はそれを聞いた瞬間、[一気に台無しにしやがった……。]っと、心中でそう思った。
□□□
そして、あの後霊夢と魔理沙との3人で、今の僕の置かれた状況についての整理と、これからの事の話し合いをしていた。
霊夢「とりあえず、アンタは記憶も名前も思い出せない状態って事で良いのよね?」
「あっ、ああー…多分。」
霊夢の質問に、あやふやにそう頷きながら答えた。
魔理沙「にっしてもよ。コイツの記憶をどう思い出させようかね……。」
と、魔理沙が悩んでいると、霊夢が一つの案を投げ掛けてきた。
霊夢「紫に聞いてみたら良いかもね。」
魔理沙「だけどよ、アイツ神出鬼没の賢者様だぜ?そう簡単に見つからないだろ?」
と、魔理沙は言うが、霊夢には何かしらの方法があるかのような趣きを出していた。魔理沙の言葉を返すように霊夢は口を開けた。
霊夢「大丈夫よ魔理沙。アイツが必ず現れる合言葉を言えば良いんだから!」
霊夢はそう言うも、魔理沙にはなんのことやらと、言っているかのような顔をしていた。
次に霊夢は、僕の方へと近づき耳元でこう囁いた。
霊夢「紫を呼びたい場合は、…………って、言えば大体は出てくるから、やってみなさい。」
「えっ??なんで僕なんすか?」
と、疑問に思ったことを口にすると、霊夢は歯切れが悪そうに返答した。
霊夢「ほら!えっと…めんどくさいから…よ!」
「へっ……へぇ〜……。」
僕は、呆きれ混じりに肩をすくめながらそう呟く。
ものは試しということで、僕は大きく息を吸ってその言葉を吐いた。
「隙間妖怪のおばさーーーん!!」
すると、僕の頭部に[ゴンッ!!]っと、重いものが当たったかのような衝撃が走った。そして、僕はそのままゆっくりとした感覚で、前へと倒れた。僕の意識が朦朧とする中、薄暗い視界の中で1人の女性が舞い降りた。
女性「誰がおばさんですって?」
と、現れた女性はそう言った。だが、僕の視界はやがて真っ黒に染まるのだった。
目覚めた後、周りを見渡すと血のついた木の桶が転がっていたが、僕は特に気に止めることはありませんでした。
主人公の名前は決まってるんですけど、一話で出せなくてすいません。次回で明らかになりますので、お待ち下さい。