59.自由研究-砂森風子生態-
【タイトル】自由研究-砂森風子生態-
【作者】エミムラ
【掲載サイト】四季ノ国屋 超時空支店
【URL】http://www7b.biglobe.ne.jp/~marboh_plus/08_gatu.html
久々カレンダー企画の作品を読んだ。
作者のエミムラは、1月の作品も書いている。あれもローファンタジーのラノベチックな作品だったが、今作はラブコメものに見える。あるいは、その皮を被ったなにか。
僕はこの作品が好きだ。かなり印象的で、後を引く作品だから。
八月の上旬。中学生の男女の、たった数日間の交流のお話。
クラスの優秀な女の子が、自由研究でわたしの観察をしてよと告げた後に本当に家に転がり込んできた。世間的には家出で行方不明の彼女を、その真意もわからないままに匿い、ひとりで抱える少年のお話。
美少女との秘密の関係や、不意に裸を見てしまうとかのラッキースケベな描写が、実にラノベ的だと思った。だが、それだけでは終わらない。
美少女を匿う。あるいは本人の言葉を借りるなら飼う。そんな扇情的で背徳的なシチュエーションは、しかし中学生には重すぎる。この年齢の設定が上手い。
人を飼うという行為の重さ。いくら個人が願うことでも、社会の仕組みがそれを許すことはない。中学生という年齢ならなおさらだ。
人間にペットとして飼われている数多の動物と同じように、人間は不自由だ。社会や他者との関わりというしがらみ、それが檻となって自由に振る舞うことを禁じてくる。それが人間という種の本質であり、動物たちと何も変わらない。そんな事実を、いくつかの描写で突きつけてくる。
ほかの作品と比べても、共通するテーマである「書店員」の登場はさりげなかったけれど、それがもたらす一冊の本が実に象徴的に使われていて、鮮やかだ。
表面的に起こる出来事を見れば、確かにラブコメ的なお話にも見える。しかしこの短編作品にはしっかりと結末が用意されている。それは、人間という動物にとっては必然的であり、そうなるしかなかった終わり方だった。
たとえ、どれだけ後味が悪かったとしてもだ。それは仕方ないことだった。
故に、後に引きずるような喪失感に苛まされることとなった。かなり印象的な作品だ。




