52.猿の血
【タイトル】猿の血
【作者】陸 理明
【掲載サイト】アルファポリス
【URL】https://alphapolis.co.jp/novel/331143699/458720372
アルファポリス掲載の作品って、これまでそんなに読んではないはず。皆無ではないけれど。ここで取り上げた作品では、第36回の「琥珀と二人の怪獣王」くらいかな。
web小説掲載サイトとしては、小説家になろうとカクヨムに次ぐ規模じゃないかなと思ってるけど、女性向け異世界恋愛作品が強いサイトだからどうも食指が動かないのかな。
今作は、その手の作品ではない。ツイッターでフォロワーさんがおすすめしているのを見て、読むことにした。かなり面白かった。
作者は、書籍化も果たしたことがあるような実力者。小説家になろうにもアカウントを持っているようで、他にも歴史小説を書いているらしい。今作はアルファポリスにのみ掲載のようだから、ここで扱うことにした。
例えば大河ドラマ「真田丸」のような、近年の歴史もので見られるような描写。かつては暗愚として認識されていた歴史上の人物を、めぐり合わせの悪さから悲劇に見舞われた好人物と描いて、なぜその人物はそうなったのかを探るお話。今作の場合は豊臣秀次、あるいは豊臣秀吉の家系だ。
豊臣秀次という男を聡明な人物として設定し、彼の謀反の容疑による切腹と妻子の惨殺という酷たらしい出来事が何故起こらなければならなかったのかを解き明かす歴史小説である。
謎を解くというお話故に、ミステリーな要素もありつつ、ホラー作品でもある。
大河ドラマで見るくらいの知識しかない僕だから、今作に登場して鍵を握る木下吉隆や豊臣秀保といった人物については初耳だった。そんな歴史素人にもわかりやすく、彼らの説明も入れつつ、そう長くはない分量の中で見事に物語をまとめている。
歴史小説然とした淡々とした語り口も、固めの雰囲気ではあるが読みやすい。
歴史的に謎とされる事象とよくわかっていない部分に大胆な解釈を入れながら、実際に起こっていることを巧みに組み合わせた構成故に説得力がある。
猿と呼ばれていた豊臣秀吉のイメージを強調してグロテスクな姿と設定したり、三条河原での秀次の妻子の惨殺といった凄惨な描写を交えることで読者の関心を引きながら、その裏にある秘密を探る物語が良かった
分量的にも長くはなく、テンポもいいので引き込まれ、一気に読み終えることができる。かなり面白い作品で、おすすめだ。




