50.近畿地方のある場所について
【タイトル】近畿地方のある場所について
【作者】背筋
【掲載サイト】カクヨム
【URL】https://kakuyomu.jp/works/16817330652495155185
僕はホラーが苦手だ。
コメディは好きだけど、ホラーは苦手だ。普段から映画好きを自称しているけれど、ホラー映画は苦手だから滅多に見ない。
一般的にホラー映画として分類される傾向にある、殺人鬼が人を殺していくタイプの映画は好きだったりするけれど。あれはホラー映画ではなくコメディ映画として見てるから。スプラッタな映画を見に行った予告編で、ホラー映画な予告編を流す風潮には抗議したいと前から思っている。
そんな風にホラーは苦手なんだけど、ここ数日で多くの人から評判になってる話題作だから、読んだ。読んでしまった。正直後悔している。
たしかに、めちゃくちゃおもしろい。そして怖い。怪異が、いつの間にか身近に迫っているのではと思わせてくれる怖さがあった。
雑誌記事やインターネットから拾った情報、そしてインタビューなんかを集めた短編集で構成されている作品。縦軸として、作者自らが語り口となって各文献を整理するお話もある。そして、それぞれに奇妙な話が綴られる。
一見すると何の繋がりもなさそうな物語に、徐々に共通するキーワードが見えてきて、奇妙な出来事は一つの場所を中心として起こっているのではという疑念が浮かんでくる。すなわち、近畿地方のある場所だ。
バラバラの話が、それぞれに繋がって中心にある怪異の輪郭を徐々に形作っていく。一方で新しい謎も出てきて、全容はなかなか掴めない。謎解きのような感覚もあるし、一つ一つの話が短くて面白いが故にどんどん読み進めてしまう。そして気づいたときには、読んでいる我々は深みに嵌ってしまっている。
話の中で語られる怪異について、それがいつの間にか近くまで迫っているのでは。怪奇へと関わるハードルの低さゆえに、そんな恐怖がふと頭に残って離れなくなった。そんな種類の恐ろしさがある。
雑誌記事の雰囲気や、口語口調の文章。果ては10年前の2chの雰囲気まで再現した文体で話が進むわけで、圧倒的にリアリティがあるのも、それに拍車をかけていた。
これは本当にフィクションなのか? 正直不安になるし、夜家に帰った時の静寂や予期せぬ物音が怖くなってしまう。そんな力を持つ作品だ。
一読の価値が大いにある。ぜひ読んでみてはいかがだろうか。かきもあるよ。




