48.仔猫は春の季語
【タイトル】仔猫は春の季語
【作者】金椎響
【掲載サイト】四季ノ国屋 超時空支店
【URL】http://www7b.biglobe.ne.jp/~marboh_plus/03_gatu.html
カレンダー小説企画の未読作品を、その月の内に読んでしまえば今年いっぱいですべて読み終わる。そういう方針でいこうかなと思う。その月のテーマに沿った風情というか雰囲気も感じられるだろうという利点もある。
というわけで3月の作品。ひな祭りの季節であり、作中でも言及される。けれど使われ方を見るに、ひな祭り自体は他の季節の何かでも代用できるマクガフィンなんだと思われる。
この作品で語られる3月とは、別れである。各個人が新しい生活に旅立っていき、人間関係が大きく変わる別れの季節。
高校を卒業して新しい進路に向かえば、今目の前にいる彼女とも疎遠になるだろう。そんな空気が物語の中から漂ってくる。
その一方で、様々な場所から集められた12本の小説という、カレンダー企画の趣旨そのものを扱い、企画全体の説明をしている話でもある。つまり「カレンダー企画」の趣旨を説明している話でもあって、興味深い。
各話にも出てくる緑色のエプロンの店員が、唐突に現れては消える。
彼らが深く話に食い込みながらも出番自体はあっさりしてるというのが、企画自体の性質をよく表している。
この短編自体の評論に話を戻そう。過去は変えられない。それに悔やんでいる人物の述懐という形で進むお話だ。
途中で出てくる店員以外は、ヒロインである少女と語り手のふたりだけで話が進む。猫というキーワードを時折散りばめながらも、終わりつつある青春の最後の盛り上がりとして奇妙な噂を確かめる二人の姿を追う。
語り手はおそらく男性で、つまり男女の仲になれそうでなれない。そんな関係のもどかしさは淡々とした筆使いによって隠し通して、最初と最後の述懐で悔いを吐露する。
それは、過ぎ去って取り戻せないこと。
けど「もしも」が本当にあったとしたら。
そんな展開の中で「仔猫」が表すものを考えれば、一見すると奇妙なタイトルも腑に落ちる。
淡々とした書き方のお話だけど、なかなか鮮やかな構成を見せてくれる短編だった。




