43.目隠し鬼さん、手の鳴る方へ
【タイトル】目隠し鬼さん、手の鳴る方へ
【作者】橙。
【掲載サイト】四季ノ国屋 超時空支店
【URL】http://www7b.biglobe.ne.jp/~marboh_plus/11_gatu.html
11月も終わってしまったけれど、カレンダー小説企画の11月の作品を読んだ。
読んだのは11月中だったんだ。
作者の橙。という方の情報はまったく見つからなかった。企画のページから個々のサイトに飛べるようになっているのだけど、Yahoo!のサービス終了のお知らせが出てくるだけ。サーバーごと無くなったということか。
名前がシンプルすぎるから検索してもめぼしい情報は出て来ないし、今後接触することはできない作者なのだろうな。もしかしたら、もう活動はしていないのかも。そんな正体不明の人の小説を読んだ。
凄まじい熱量を感じられる小説を、読んだ。
一年の中でも特にイベントごとがない11月の短編作品は、10月と同じく読書の秋。そしてタイトルにある通り「ちいさい秋見つけた」の目隠し鬼だ。
「目隠し鬼」と呼ばれる種類の鬼ごっこを、実際にやったことがある人間は、これを読んだ人にはいないと思う。僕もそうだ。視界を塞がれた鬼さんが他の誰かを捕まえるなんて、無理だ。
これはそんな目隠し鬼さん。つまり、盲目の少女を巡った人々の善意と、悲劇のお話だ。盲目の少女の、読書のお話だ。
他の作品と比べても雰囲気が暗くシリアスであり、余韻の強い作品となっている。分量も他のよりもあって、趣が違う一本だった。
物語の中心にいるのは、ある少女だ。彼女は盲目でありながら美貌によって人々を魅了し、心の奥底の優しさを掻き立てる。
一方で、物語を動かすのは少女の周りにいる多くの人々。魅了され心動かされた者の姿が主体となっている。
つまり少女は強烈な個性によって周りを振り回す舞台装置、あるいは触媒にすぎない。
触媒であるがゆえに、積極的に動くことはない。たしかに彼女は、作中で個性を見せるし人生も書かれる。その特異な能力は作中の見せ場のひとつでもある。
けど、やはり舞台装置なんだ。彼女を取り巻く人々の幸せ。そして行動こそが物語の主題になっている。
なぜそう思えてしまうのか。それは、取り巻く人々の群れの中には、確かに「僕」が紛れ込んでいるからなのだろう。故に僕は彼らと同じように、彼女に魅了され、羞恥心を抱くことになった。
目隠し鬼さん、手のほうへ。けど、捕まりたくはない。
僕は、捕まってしまった。そういう運命なんだ。
その意味は、ぜひとも読んで確かめてほしい。
他の短編とは、かなり趣の異なる一遍。けれど強烈な読後感を味わうことになった。




