4.「文体ってなんだよ!」「文章作法ってなんだよ!」という人のための文体入門
【タイトル】「文体ってなんだよ!」「文章作法ってなんだよ!」という人のための文体入門
【作者】夜霧醒客
【掲載サイト】ノベルアッププラス
【URL】 https://novelup.plus/story/351764713
ツイッター上では別の名前で登録しててそっちの方が僕には馴染みがあるのけれど、ノベプラでは酔客の名で活動している方の書いてるエッセイだ。つまり僕が書いてるこの文章は、エッセイに対するエッセイってことになる。
百人一評という、ツイッター上で募集した作品を論評するエッセイの方が有名かもしれない。近現代の娯楽作品に造詣が深い方で、その評論センスも高い。すごい人だって素直に尊敬できる方だ。
漫才史と文学史に特に詳しい様子で、ツイートも含蓄に富んでいてとても楽しめる。本人はキリヒコさんは謙遜で知識量は多くないとおっしゃっているが、とんでもない。ネット小説界隈広しといえど、これほどの人はなかなかお目にかかれない。そんな人が書いているという意味でも、読む価値のある評論になっている。
そんな作者が書いている、文体とはなんぞや。文章作法についてたまに議論が起こってるけれどなにが正しいのか。あるいは、正しいと決めつけること自体が正しくないのだろうかということを論じているエッセイだ。
豊富な知識で殴ってくるタイプの、文章表現とか文学作品の諸々の論評というか。文体とか文章作法についてものすごくためになる知識を教えてくれる、学べるタイプのエッセイである。
カギ括弧の最後の句点をつけるつけないの話から始まるが、その文章の充実度合いがすごい。文章力及び知識量がすごくて、読んでるだけでなんか頭がよくなっていく気がした。もちろん気のせいで、頭がいいのは酔客さんなのだが。
それから虚無小説の文体について解説するパートが好き。虚無小説って概念を完全に言語化してくれて、それにぶち当たってしまった個人的な怨嗟の感情とか漏れ出てくる箇所とか。こういう文章を書きたくないという気持ちにさせてくれる。
作品冒頭で言及されているように、文章作法についてうるさい輩が絡んできた時にこのエッセイを投げれば大抵解決するという使い方もできるし、書かれていることを念頭に小説を書いていれば、虚無小説を作ってしまう可能性を回避できる。そういう意味でとても実用的なエッセイと言える。もちろん読み物としてもおもしろいため、一読をおすすめする。