29.1.28秒だけ待って
【タイトル】1.28秒だけ待って
【作者】牛髑髏タウン
【掲載サイト】四季ノ国屋 超時空支店
【URL】http://www7b.biglobe.ne.jp/~marboh_plus/09_gatu.html
この「なろう外評論」では過去も何度か個人サイト投稿の小説について評論をしたことがあるが、そういう小説を多くお目にかかるかと言えばそうではないという現実もある。
過去に紹介したのは、Twitter上で知った方の作品か、小説とは関係ない分野で知ったサイトに投稿されている作品。そういうきっかけでもないと、個人サイトなんてもの自体が絶滅危惧種になりつつある時代に小説サイトとの出会いなど滅多にあるものじゃない。
個人サイトが消えていったのはブログなるものが流行ったからなんだけど、そのブログもいつの間にかSNSに押されるようになった印象だ。インターネットにも流行り廃りの歴史なんてものがあるのだなあ。
それはそうとして、今回読んだのは個人サイト掲載の作品。これはTwitterのフォロワーから教えてもらったサイトだ。そして単に個人サイトと呼ぶには、少し特殊なサイトらしい。
2013年の8月にサイトがオープンして以降、更新された様子がない。コンテンツの数もわずかで、どうやら12本の短編小説を掲載する単発企画のために開設されて、その企画以降放置されているらしい。
企画の趣旨は、1月から12月までの各月をテーマにした12本の短編小説を複数の作者に書いてもらう、というもの。発起人も一編書いているらしい。
今回読んだのは12編のうちのひとつ、9月のお話だ。このサイトを紹介してくれたフォロワーのおすすめだったから、読むことにした。
作者の牛髑髏タウン氏は、小説家になろうにアカウントを持っている創作者。2020年の5月まで活動の履歴があったが、それ以降は特に更新されている気配はない。Twitterもやってて、それは今に至るまで更新されているね。
そして、本を出版している書籍化作家だ。
いわゆる「なろう系」といったライトノベル系の作品ではなく、短編を集めた文芸作品での出版。こういう分野の作品で評価されるのも羨ましいなあと、僕も少し思ってしまった。僕も書籍化作家だけど、勝てないなあと。
実際、この短編作品もかなり面白かった。僕にはこれは書けないなと思った。
親の転勤で日本を出て、どこか英語圏の場所に引っ越すことになった高校生のお話。住み慣れた場所を離れた寂しさと不安、それをあまり出したくないスカした感じも出すような、高校生的な感情表現が丁寧に描写されつつ、それが払拭されるある出来事までを書いている。
特筆すべきは全体の構成力と、短い分量の中で張り巡らされた伏線。読んでいてちょくちょく違和感を感じさせる箇所があり、それがある瞬間に一気に氷解する。かなり気持ちのいい感覚を得られる作品で、気に入った。
高校生の微妙な心情をしっかりと書いているのだけど、それは特殊な舞台においても変わらないことを見せることで、普遍的な人の気持ちというものを実感させてくれる。壮大な話でありつつミニマムな視点で進めてくれる、なかなか興味深い作品だった。
他の11作も読んでいく予定。さすがに、12作連続でこのサイトの小説について更新することはないと思うけど。




