12.El Pirata Del Grimorio ~魔導書の海賊~
【タイトル】El Pirata Del Grimorio ~魔導書の海賊~
【作者】平中なごん
【掲載サイト】カクヨム
【URL】https://kakuyomu.jp/works/1177354054889619569
カクヨムでは、年に一度の大規模なコンテストが実施されてるらしく、カクヨム勢がざわついている気がする。なんでも読者選考なるものがあるらしく、読者間の評価が重要らしい。
なろうしか登録していない僕には縁のない話だし、実のところ読者選考がなんなのかもわかっていない。でもこれを機会に、カクヨムのおもしろい話しを読んで紹介するのも悪くないかもしれない。
というわけで、今回の作品だ。
ファンタジー世界の海賊小説というか、海洋冒険小説である。政府機関が運ぶ宝を奪いにかかる海賊たちの戦いとその顛末が書かれる。重厚な設定とコミカルなキャラのバランスが良い一本で、十数万字で完結している中で要素要素がコンパクトにまとまっている。
冒頭からキャラクターの名前が次々に登場するのに最初は面食らうけど、各キャラの個性や立場の違いが際立っているために覚えやすい。キャラの名前は個性に付属するものと割り切ればいい。キャラクターに元ネタがあるのもあり、意外に読みやすい構造だ。
十数万字の中で、起承転結をしっかり書きつつキャラクターのこれまでの人生も簡潔ではあるが説明しているから、なかなか濃い作品となっている。この話だけで終わらせるにはもったいない作り込みだと思ったら、ちゃんと続編の構想はあるようだ。もっと長編作品で映える設定だと思うので、正しい判断だと思う。
海戦を扱った作品でありつつ、ファンタジー要素も多く取り入れられてて飽きないのも特徴。現実的な兵器や水夫たちの頑張りと、魔法を用いた戦術がうまく同居できてる印象だ。
魔法一辺倒で戦いが解決するわけではないが、次から次にユニークな魔法が出てくる様も面白い。戦術に幅を持たせることに成功している。
大洋の中で暴れる海賊が何故こんな生き方を選んだのか。海賊である意味や、これからも続く冒険への高揚なんかも書かれていて、異色ながらも楽しめる冒険小説だった。