102.空白
【タイトル】空白
【作者】朱
【掲載サイト】カクヨム
【URL】https://kakuyomu.jp/works/16818093089362885300
Xで面白いって評判になっていた作品。短編だからすぐ読めそうということで読んでみた。なるほど面白かった。
8500字くらいで完結するホラー作品。シンプルなタイトルが色々想像をかき立ててきて良いね。空白。単になにもないという意味ではなく、何かがあって、それが抜けているというような言葉。周りになにかがあって、そこに無い。
空虚感や、あるべきものが無いという不安な感じがいかにもホラーだ。
そのタイトルの意味はちゃんと作中で明かされるし、なるほどと思えるものだった。
描写が良いなと思える作品だ。ホラー作品だから、おどろおどろしい雰囲気は存分に出しながらも、同時に物悲しさも感じられる心情描写が素晴らしい。
そういうジャンルがあるのかは知らないけど、山ホラーと呼ぶべき、山を舞台にした怪奇譚。ただし幽霊とかの怪奇現象は起きない。起きてもホラー作品としては十分に成立するものなんだ。そして、ちゃんと怖いというのが良かった。
山とは、人に豊かな実りを与えつつ、命を容易に奪うこともあるもの。そう考えると不気味なモチーフに見えてくる。
実りをもたらすというのも、時にやっかいな訪問者をもたらす。主人公の鬱々とした心情で進んでいく話を山の閉塞感で彩っていて、実に重苦しい雰囲気の話になっている。
だからこそ、作中に登場する山の侵入者の在り方が際立つというか。後ろめたさも、それを感じたくない強がりが、嫌な感じで好きだな。
山について知らないから、不用意に入ろうとする。恐れもしない。そんな彼らの振る舞いが味わい深い。山で楽しんでいたりするんだけれど、その楽しみ方が妙に乾いて見えるというか。そこに主人公がやってきて、さらに嫌な雰囲気になる。この描写のいやらしさみたいなのが、すごく上手い。
ホラー作品だから悲惨なことが起こるって結末だけど、直接は書かないという方式も良い。けど嫌な後味はしっかり残る。実に良い雰囲気の作品で、楽しめた。




