10.ゾンビランナー(短編集:わが地獄(仮)より)
【タイトル】ゾンビランナー
【作者】顎男
【掲載サイト】ニートノベル
【URL】https://neetsha.jp/inside/comic.php?id=9427&story=9
このエッセイ、なろう外作品評論集は、小説家になろう以外の場所にあるweb小説すべてを読んで評論する対象にしている。
とは言っても、当初の想定ではメジャーな投稿サイト、カクヨムとかノベプラの作品ばかりになるかなと考えていた。
もちろんこれらのサイトの小説も読んできたが、それ以外の投稿サイトに掲載されている作品や果ては個人サイトにもおもしろい作品が多く存在すると知って、考えを改めることにした。
世の中には僕が知らない小説投稿サイトがあって、まだ見ぬ作品が眠っているのだろうとツイッターでつぶやいたところ、フォロワーからこの作品を教えてもらったという次第だ。
件のフォロワーには本当に感謝している。氏の書いた短編「ウーアの住む駅」はすごい名作だからみんな読んでほしい。他の作品もいずれ読んでレビューするから、首を洗って待っていてほしい。
閑話休題。この作品が掲載されているサイトは「ニートノベル」という。新都社という、webコミックとweb小説を投稿するサイトで、いくつかある部門の中の小説投稿サイトである。
このニートノベルというサイト以外にも、文芸新都というサイトもある。両者の違いはよくわからなかった。あんまり盛況な投稿サイトではなさそうだけど、それでもそこにこだわるという書き手の情熱みたいなのは伝わってくる。
この作品は、顎男という作者が書いている「わが地獄(仮)」という短編集で、勧められたのもこの短編集全体だった。おもしろいのが多いよって感じで。
その中にゾンビ小説を見つけて、我慢できなかった。
冷静に考えれば、これの前に二回連続でゾンビ小説をレビューしている。本作を含めれば三連続だ。さすがにまずいかなとは思ってる。このままではゾンビ小説評論とタイトルを改めなければならなくなる。
ちょっとは自重しよう。でもこの小説はおもしろかった。だからレビューをする。
いわゆる増えていくゾンビとは異なる、死体に細工をして使役する機械としてのゾンビを扱った、一種のディストピア小説だ。
死者を蘇らせて労働とすることで、人類は労働から開放され、さらに死体を戦わせる娯楽が人気を集めている。倫理観などとうに忘れ去られた世界。読者の観点からすると、ろくでもない世界だ。
それゆえにディストピア小説と思ったのだけど、作中の人間はその技術革新を謳歌している。となれば、倫理観に目を瞑ればこれは良い世界ではないか? そもそもディストピアとはなにか? 漠然と考えていた定義が揺らぐ感覚がした。
実のところ、作中でも倫理観を問い直す下りは存在する。忘れられていた倫理が、ある瞬間に思い出される。しかしそれも、次の展開にかき消されてしまう。
それはバトルもの小説としては熱い展開なのだけど、世界の構造の歪さ故に、どこか乾いたものに見えてくる。
この作品とはつまるところ、倫理を乗り越えるお話なんだ。非道徳を肯定的に書く。それが受け入れられる世界を書く。
そういう観点からすれば、これは間違いなくディストピアなのだろう。世界の誰もが幸せになるディストピアを書いた小説だった。なかなかに味わい深かった。
ゾンビ小説が続いてしまったから、今度はゾンビ以外を読む予定だ。フリじゃないからな。




