1.死がふたりを別つから
【タイトル】死がふたりを別つから
【作者】ルマランゼ
【掲載サイト】カクヨム
【URL】 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888440847
カクヨム掲載のミステリー小説。
硬めの文体と、精神世界や宗教的な話題の出てくるこの作品は、一見するととっつきにくい印象を受ける。
しかし実際読んでみると、文体は丁寧でスラスラと読み進められる。おもしろいと素直に思える作品だった。
ジャンルはミステリー。美しい少女の自殺から始まるのはいかにもという感じがしつつ、その少女の幽霊が見えるという主人公の視点で書かれる物語は、オカルトかホラーかと一瞬思わせてしまう。しかしこれはれっきとしてミステリーだ。
閉鎖性の強い、女ばかりが集まる全寮制の女学園という舞台の中で、ひとりの少女の死に振り回される人々を描いた作品。章ごとの登場人物の数を抑えたミニマムな設定のお話で、この中でどうやって話を広げていくかといえば、宗教的背景と登場人物の内面描写に入り込んでいくことになる。
登場人物の心の機微や思惑。あるいは抱えている事情。決して多くはない人数だけど、その内面をつぶさに読み解いていくことで謎を解いていく。だからこれはミステリーだ。
幽霊や呪いといったワードが出てきつつ、オカルト要素は排して、ありえる事実の積み重ねと人間の精神だけで物語を進めている。
その中で浮かび上がってくるのは、人間の精神の醜さ。あるいは特異性。個人の内面の複雑さでもあり、こじれた人間関係のなせる醜悪な結果も見えてくる。
人はこうなるのか。描写の丁寧さゆえに、そんなこともありえるかもしれないと、展開に説得力をもたせることに成功している。
ところで、読んでる間は京極夏彦の名前が常に脳裏にちらついていた。文体とか話の構図とかが。後で作者と話したところ、意識はしていないけど影響があったことは否定できないとのこと。
もちろん、この話の独自性は強く保たれているため、おすすめできる作品となっている。