キャラメルビーズ☆KISS
ハッピーエンドの直後。
イチャイチャしているだけの話です。
本当にただそれだけ…。
もうすぐ期末テスト。
今日も瑞希の部屋で勉強を教えて貰っている、のだけどーー
「この点Pの座標を仮にX,Yとして――」
「…………」
私はなぜか背後から抱きすくめられている。
耳元に瑞希の息がかかる。
肩に回された両腕が私の腕の可動範囲を制限していてーーー正直、とてもやりにくい。
どうみても勉強する体勢ではないよね、これ。
「…ねえ、ちょっと離れない?」
「やだ」
「字、書きにくいんだけど…」
「そう?それじゃ…」
肩に回された腕が剥がれ、ほっとしたのも束の間、今度は腰の周りに巻きついてきた。
背後から離れる気は無いらしい。
腕にぎゅっと力が入り、正直、お腹が苦しい。
「これなら書けるだろ」
「もう! 意味分かってない!」
くっつくなって言ってんのに!
腹が立って後ろを向き文句を言う。
「落ち着いて勉強出来ないよ、こんなのーーー」
言いかけて言葉が途切れる。
瑞希が私の口を塞いできた。
腰に回された腕が離れ、瑞希の両手が私の左右の肩に触れる。
「ん…」
…
…
なんか長いんですけど…
…
瑞希の唇はまだ離れない。なんてしつこい。
…
瑞希ってキス、好きだよね。
飽きたりしないんだろか。
いい加減この体勢続けるの、しんどくない?
…
「ぷはっ」
やっと離れてくれた!
と安堵した次の瞬間、再び唇に吸い付いてきた。
背後にいた筈の瑞希が、いつの間にか私の真横に移動している。
左肩に当てられた手が離れ背中に絡みついている。
…
だからさあ、勉強しに来てるんだっての。
なんかいつもこんな流れなんだけど、こんな事でいいのか私…
いや、だめだよね。どー考えてもダメだよね。
瑞希って勉強教えるの上手で、頼りになると思っていた筈なんだけど、なんでこんな事になってんの?
…
ぐにっ
両方の手のひらで、瑞希の頬を押し私の顔から引き剥がす。
なんだか爽やかな空気がやってきた!
「真紗…」
口を尖らせ不満げな表情をする瑞希。
しかーし、怯んでいてはいけない!!
「あのね、私、お勉強したいの! べたべたしに来てるんじゃないの!!」
しょんぼりして腕を緩める瑞希の伏せられた目が憂いを含み……ああ、見てはいけないやつだあれ…
「分かった、勉強終わるまで我慢する…」
「分かってくれた? ありがとう」
「その代わり…勉強終わったら、真紗の方からキスしてよ」
瑞希の瞳が輝いた。長いまつげが軽く細められた瞳を妖しげに彩っている。紅を差したような口元がにっと綺麗に持ち上がる。
「え?」
思わずどきりとしてしまう。
「真紗の方からしてくれた事ないじゃん」
「えー! ……一回あるじゃん……」
出来心で触れたあの日の事を思い出す。
瑞希と近くて遠くにいた、あの日の出来事を。
「あれだけ?」
瑞希の目が妖しく煌めいて、マトモに見続けると私はどうにかなってしまいそうだ。
慌てて目を逸らす。
逸らした先にまた、瑞希の顔が追いかけてくる。
ひゃあ!
「わかった、する。するから…」
真っ赤になって顔を腕で隠す私の目の前に。
「楽しみにしてるよ?」
私の大好きな、ふわっふわの笑顔をした瑞希が、いた。
ああ私、この笑顔に弱いんだよねえ。
吸い込まれそうになる。
顔を覆う腕が緩んで、体が動いた。
思わず唇に触れる。出来心パート2…。
あ、勉強終わってからするんだった。
「フライングしちゃった」
ぺろっと舌を出す。
瑞希の頬が染まってる。
「…やっぱり、我慢無理かも…」
こうして今日も、お勉強は進まないのだった…。