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イントロ・修学旅行

修学旅行編の前置きみたいなものです。

いわゆるエピローグ。


 6月になると、修学旅行がある。


「修学旅行の班決めですが、男女別々でも混合でもいいので、4人で1グループ作ってください。グループは誰と組んでも構いませんので、皆さんで話し合って決めてください」


 GWも終わり、間もなく中間テスト期間に入ろうかという頃の事。修学旅行の説明で、しおりが配られると共に、担任が衝撃的な事を言い出した。

 

 4人1グループ…!


 しおりを眺めていると、どうやら自由時間に観光タクシーを使うようだ。なるほど、それで4人か。

 でもでも、うちのクラスの女子、4人以外のグループばかりなんだけど…。


 不穏なものを感じる私の元に、ぴょこんとなっちゃんがやってきた。

 今日も可愛い。


「真紗さん、一緒に回りましょ」

「うん、一緒に回ろうね、なっちゃん」

「私、行ってみたい所があるの」


 しおりによると、2泊3日のうち、2日目は終日自由行動らしい。観光タクシーを使って、自由に観光ルートが決められるみたい。楽しみ!


 しかし、私たちは2人組。あと2人と組む必要がある。

 どうしようかな……。


 ちらりと教室の中を見渡せば、男子は適当気味に4人づつ人が固まっていき、すんなりと班決めが終了していた。

 なんて、平和な光景。超羨ましい。

 問題は、やっぱり、女子…。

 

 普段、5人仲良しグループの子達の中に、不穏な空気が漂っている。

 こういう時、グループ内で立場の弱い子が弾き飛ばされたりするんだよね。ああ怖い。


 あっちでは、3人グループの子が、あと一人を誰にするか物色気味に教室内を見渡している。ここで5人組のあぶれた一人がくっつけば丁度いいじゃないか、なんて思ってはいけない。

 仲良し3人組の所にお邪魔するなんて、自由時間ずっと、居心地はマックスで最悪だ。


 あとは、同じく恐怖の3人グループが1つと、私達と同じ2人グループが1つ。後は、休みがちの子が1人。


 5、3、3、2、1。そして私となっちゃんの2人。合計女子は16人。

 これ……分割、難航する気しかしない…!

 

 取り敢えず私は、2人組の所に向かう事にした。

 2+2で、丁度4だし、この恐ろしい班決めからさっさと抜け出そう…!

 

「ねー、私達と組まない?」

「オッケー、よろしく」


 出遅れたらしく、私が椅子から立ち上がったと同時に、2人組の子達は別の子達に取られてしまった。どうやら5人組の子達が、2と3で別れる事になったらしい。

 2の方が私が声を掛けようとした子達とくっつき、3の方が1人の子とくっつく事で話が纏まったようだ。


 え、なにこれ。4、4、3、3、私達の2…?

 いやああああ、なにこの嫌な流れ。

 なっちゃんと別れて3とくっつくなんて嫌すぎなんだけど…。


 3人グループのリーダーらしき子が、私達の所にやって来た。


「堀浦さんか足立さん、どっちか私たちのグループ来てよ」

「え、私、なっちゃんと別れたくないんだけど…」

「うちらのとこも、あっちも3なんだ。堀浦さん達が別れてくれれば丁度いいんだけど」

「嫌だよ、私たちも2人で組みたいよ…」


 ここで引くと、修学旅行は最悪になる。

 どのグループも全く引かず、班決めは決まらないまま、後日持越しになるのだった。

 



     ◆ ◇ ◇ ◇




「どうしよう、真紗さん…」

「班決め決まらないね。私達が別々になればいいって、他の6人みんなが思っているよね」


 あれから数日が経つも、全く班決めは決まらなかった。

 明日には、決定させて担任に伝えないといけない。

 お弁当を食べながら、なっちゃんと顔を見合わせ溜息をつく。

 あの流れにあの空気、私たちが別れる事になるのが濃厚そうで、辛い…。


 3人組があと2つ。


 そのうちの1つは、以前、保健室から戻ってきた時に私の噂話で盛り上がっていた子達の所だ。間違ってもあそこに放り込まれるのだけは、勘弁して欲しい。

 もう1つのグループは、これまた綾川さんを彷彿とさせるようなカースト上位女子グループで、ここもここできつそうなんだけど……。


「そういえば、なっちゃんはどこに行きたかったの? 自由時間」


 嫌な現実から目を逸らし、楽しい話題で心を慰める事にする。

 京都のガイドブックと修学旅行のしおりを机の上に広げた。


「しおり見てると、初日は稲荷大社にみんなで行って、最終日は清水寺周辺に行くみたいなんだよね」


 ぱらぱらとしおりに目を通す。定番の所はみんなで団体行動する事になっている。


 なっちゃんが、大きな目を輝かせて私の方を向いた。

 

「私ねえ…せっかく京の街に行くんだし、お香体験してみたいなあって」

「なにそれ」

「香りを当てっこしたりするの。京都ってかんじすると思わない?」


 それ、京都って感じなんだ。

 全くピンと来ない内容を、うっとりした顔でなっちゃんは語りだした。

 

「あとは…祇園の街で舞妓体験なんかもしてみたいなあ。綺麗な姿に変身して、瑞希くんに見て貰うの…」

「瑞希とルート違うだろうから、見て貰えないんじゃないかな。それより、他に見たい場所とかは?」


 なっちゃんがまたもや乙女モードに突入しかけたので、引き戻す。

 瑞希は隣のクラスだし、そもそも班が違うとルートも全く別になるので、なっちゃんには可哀想だけれど一緒になる事はないだろう。


「瑞希くんと同じ班になりたかったなぁ…」

「クラス違う時点で無理だね」

「残念だわ……。ううん、他はねえ、三室戸寺も行ってみたいなあ。ほらちょうど紫陽花のシーズンだし、綺麗だと思わない?」

「なっちゃん、宇治はちょっと、遠いんじゃないかな。市内でお願い」

「ううう残念……」

「私、南禅寺に行ってみたいな。近くにいい湯豆腐のお店があるんだって! お昼に湯豆腐とか京都っぽくていいよね。美味しそうだよね?」

「真紗さん、それ、南禅寺がついでに聞こえるんだけど……」


 こうして、2人だらだらと、楽しく現実逃避をして過ごすのだった。




     ◇ ◆ ◇ ◇




「堀浦さん!」


 翌日、学校につくと2人の女子から声を掛けられた。

 班決めの決まらない2グループのそれぞれ代表らしい、榊さんと吉岡さん。

 思わず眉間に皺を寄せ、2人を眺める。


「ねえ、あなた足立さんと一緒に行動したいんでしょ?」


 そうだよ。なっちゃんと一緒が良いに決まってんじゃないか。

 私のこと勘違いしてるなんて言い放った榊さん達や、会話のテンションがまるきり合わなさそうな吉岡さん達と一緒とか、絶対やだ!


「ねえ、こうしない?」


 吉岡さんがニヤリと笑って私に詰め寄った。


「堀浦さんと足立さんは別々になって私達のグループにそれぞれ入るの」

「いやだ…!」

「最後まで聞いてよ。2つの班の行動を全く一緒にしてしまえば、一緒に回るようなものでしょ? どうよそれで」

「………」


 確かに、観光タクシーのルートを全く同じにしてしまえば、移動中が別なだけで、現地ではなっちゃんとずっと一緒だ。悪い提案ではない。でも……。


「私達も行きたい所があるんだけど…」

「分かってるわよ。お香よね、それ回ってあげるから後は私達で決めていい?」


 昨日の会話聞かれてるし…!

 

 やけに態度のデカい吉岡さんに威圧され、答えが出てこない。

 これ、どうするべき?

 

「取り敢えずなっちゃん……足立さんと相談して、返事するね…」



 気は乗らないのだが、全く別々にされることを思えばまだマシだ。なっちゃん希望の場所も押さえてくれるようだし。

 そもそも、榊さんも吉岡さんも、3人組を崩すつもりは微塵もなさそうだし、このままではまるで決まらない…。



 なっちゃんに相談すると、私と同じことを思ったのか、吉岡さんの提案にあっさりと同意した。


 


 しかしこの時、なぜかなっちゃんの頬がピンクに染まっていたのを、私はまるで見抜けないでいた…。








綾川さん → 「遠く響く声」に出てきた、中1の時に真紗を中庭に呼び出した子。


次の次から修学旅行編です。

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