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ハッピーエンドの直後

瑞希回。

引き伸ばすと、前回遊んでごめんね、たまには瑞希を幸せにしてあげるよ回。

タイトル通り、本編ラストのすぐ後。


 真紗がオレに好きだと言ってくれた。


 何年もずっと、真紗の口からこの言葉が聞きたくて堪らなくて。ようやく耳にできたオレはまるで夢を見ているようで、嬉しくて嬉しくて。

 

 グラウンドの真ん中にいて、みんなに見られていると分かっていたのに、真紗にキスをして抱きしめる事が、どうしても止められなかった。


 体育祭が終わり、急いで家に帰る。一時でも早く真紗に会いたくて。正直、あの時のあれ位じゃあ、まだ全然足りない。


 ずっとずっと、焦がれ続けてきたんだ。

 キスだって、抱き締めるのだって、もっともっとしたい。

 これでやっと、好きなだけ真紗に触れる事が出来る。



 コンコン。


 家に帰り部屋へ入ると、荷物を無造作に床へと置き、着替えもせずに窓へ向かう。気付けば真紗の部屋の窓を叩いていた。


 がらりと窓が開き、中から真紗が現れた。

 昼間は黄色のワンピースを着ていたのだけど、汚れたからか、部屋着に着替えていた。化粧も落としたらしく、いつもの真紗がそこにいた。


「今日はおつかれさま!」


 オレの大好きな、柔らかい笑顔で真紗がオレを見てくれる。

 これがもう、オレのものだと思うと、どうしようもなく頬が緩んでしまう。


 このまま真紗の部屋に入ろうかと思ったのだが、思い止まる。大丈夫だとは思うが、万が一真琴が帰って来て鉢合わせたらと思うと気まずい。

 そこまでの事をする気はないけれどーーキスしたり、抱き締めたりは、当然、したい。それもたっぷりしたい。


「嬉しかったよ、今日は。真紗、今からオレの部屋に来てよ」

「うん…」


 少し頬を赤らめ、真紗がオレの部屋へとついて来てくれた。こんな顔をオレに向けてしてくれるなんて、本当になんだか、都合の良い夢を見ているようだ。


 昔はいつ見ても素だったな。

 真紗、どうみてもオレの事意識していないように見えたな。


 部屋に入り、ずっと我慢していたものがはち切れるように、真紗の口目掛けて自分の口を合わせにかかる。

 柔らかくて温かい。相変わらず真紗はいい匂いがする。昔は手を出さないように必死に我慢していたものだが、もう我慢しなくて良いのだと思うと、なんだか止まらない。


 名残惜しく唇を離した後、ぎゅっと抱き締める。あまり強くすると真紗が苦しいと思うのだが、どうしても抱き締める腕に力が入りそうになり、少々苦労する。


「真紗が、オレの彼女になってくれて、嬉しい」

「私、瑞希の彼女になったの…?」


 あれ、彼女になってなかったの?

 まあ確かに、付き合ってとはまだ、言ってなかったけどさ。


「オレの事好きって言ってくれたじゃないか。オレだって真紗が好きなんだから、付き合おうよ」

「うん…。瑞希の彼女になる覚悟、ちゃんとしといたから、大丈夫」


 意味のよく分からない事を言う所だけは相変わらずだ。

 覚悟って何? まさか…まさかな。

 

 真紗の頬にオレの頬を寄せる。

 うん…幸せ過ぎる…!


「瑞希、なんだか部屋来てからずっと、くっついてばかりだよ」

「仕方ないじゃん! ずっと我慢してたんだから」

「もしかして、わりと長いこと、私の事好きでいてくれてたの?」

「そりゃもう! 多分小さい頃からね。気付いたのは中2の冬だけどさ。ちょっと遅すぎだよな、オレ」

「ううん、私の方がずっと気付くの遅い…。だって、私も多分、小さい頃からずっと好きだったんだもん」


 なんだそれ!


 中学の頃は、まるでその気がないようにしか見えなかったけど? オレ、わりとギリギリ態度に出してたハズだけど…なんで、それで、あんな反応だったんだよ…。


「いつ気付いてくれたの?」

「えっと…あの、例のキスの時」


 ちらりと真紗が横を向いた。

 あれ、おかしいな…。


「あの時、自分の気持ちが分からないとか言ってなかったっけ?」

「言ったよ。その後、悲しそうにしている瑞希見て、なぜか好きだよって言葉が口から漏れてて。それでやっと気づいたんだよ」

「じゃあ、今日まで持ち越さなくっても、あの時言ってくれれば…!」


 なんだなんだ。道理であの日、おあいこなんて言ってキスしてくれた訳だ。

 あの時は真紗が何考えているのか、マジでわからなかった。オレが一方的に仕掛けてしまったキスを、許してくれる意味のキスなのかと思っていた。


「その通りだよ?」


 心の中で語っていたつもりだったのだが、衝撃的過ぎたのか、つい言葉として口から出ていたようだ。


「だってあの時は、まだ……瑞希の彼女になる勇気が出なかったから…」

 

 照れた様子で真紗が視線を逸らす。

 だから勇気ってなんなんだよ…!


「もしかして、彼女になったら、その…キスの先が待ってると思ってて、それで躊躇ってたの?」


 真紗が目をパチパチさせている。


「そんなの! 真紗が嫌がるなら無理にしようとしないよ。そもそも、高校生の間はちょっと、早いとも思うし…」


 でも、勇気が出たって事は…

 真紗はOKって事なんだろうか…


 なんだかドキドキしながら真紗を見てしまう。


「え…なんの話? 勇気って、そのまんま…瑞希の隣で歩く勇気だよ?」


 やっぱり意味の分からない事を言う。

 オレの隣を歩くのに、何故勇気が必要なのか。


 まあいいや。

 今、オレの隣に居てくれることを、真紗が選んでくれた。

 それで十分だ。


「これからはずっと、隣歩いてよ、真紗」


 真紗の頬を手に取り、再び唇を寄せた。

 甘い甘い真紗の唇は、甘い誘惑への入り口なのだと、程なくオレは気づくのだった。

 




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