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第一話：陰トロダクション

　この世の中には決して変わらない、対局するものがある。電気のプラスとマイナス。グラフ上のXとY、白と黒。気が遠くなりそうになるくらい昔、現在の中国に当たる場所にて生まれた風水思想に、光と影、陰陽というものがある。陽は積極的なものなどを表し、そして陰は非積極的なものなどを表すという。彼から言わせてみれば、この陰陽は今の高校というソサエティの中にも続く、揺るぎないものだと思う。

学校という社会には平等を謳う日本国憲法の中においても暗黙の身分制度が存在する。スクールカースト。部活やクラスの中での態度で細かい身分が変わってくるが、大まかに分けると、陰と陽の２つのサイドに分けられる。ヒエラルキー上部に属するのが陽で、俗に陽キャと呼ばれている。クラスでの行動が目立ち、いつも友人に囲まれて青春を謳歌しているように見える。それに対をなすのが陰キャと呼ばれるもので、スクールカーストの下部に属するか、もしくはそもそもソサエティ圏外に属している。そんな陰キャは地味だったり根暗だったりと少し悪いイメージが見えるかもしれないが、必ずしも悪いわけではない。目立つことを嫌い、ささやかな平和を好む道、「陰道」を歩むものたちなのだ。

　非積極。平和。干渉すること、派手になることを嫌う崇高なる思想、陰道。そしてその陰道を極めしプロフェッショナルインキャの高校２年生、トチギは大都市を今日もひっそりと波風立てぬように歩き、学校へ向かうのだった。