第八話 近衛隊長と手合わせ
翌朝、目覚めるとエドワード様の姿はなかった。
自分の部屋に戻ったのかな?
「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます、もうドロシーさん! 昨夜は違ったんですよ」
「ええ?」
私はドロシーさんに事の顛末を話した。
「殿下は聖人であらせられますな」
「お陰で恥ずかしい思いを」
あははとドロシーさんは笑い飛ばす。
「いっそ、お嬢様から襲ってしまってはどうですか?」
「な!?」
「意外と面白い殿下が見れるかもしれませんよ?」
「そうかもしれませんけど、やりませんよ?」
私とドロシーさんは最近はこんな感じだ。
「そういえばお嬢様、近衛隊の隊長から、面会の申し出があったんですが、いかが致しましょう?」
私はふと思い出した。
エドワード様が、私と随分会わせたがっていた人だ。
「ああ、急遽婚約が決まったので、なかなか会えず延び延びになっていたんだった」
「王妃様から、特別レッスン捻じ込まれましたからねぇ」
ダンスや宮廷マナー、いわゆるレディの嗜みは急務だった。
これから公務で、嫌でも使わないといけないスキルだ。
「今日お会い出来る?」
「大丈夫だと思います。連絡しときますね」
私は隊長に会う為、以前エドワード様とやり合った演習場までやったきた。
連絡したら、こちらにいるので出向いて欲しいとのこと。
普段、衛兵や近衛隊が訓練で使っている場所なだけあって広い。兵達の住まいである兵舎も併設されている。
早速、兵達は朝から訓練を行っていた。
さて、隊長はどこだろう?
私が兵舎付近をうろついていると、さすがに何人かの若い兵に気付かれた。
「あの、隊長に会いに来たんですが」
「あ、こちらです」
案内されてやって来たのは、演習場の裏の林だった。
「隊長!! た〜いちょ〜!!」
なぜか、大きな木に向かって叫ぶ。どういうこと?
「姫様が、お見えになりましたよ〜〜〜!!」
「………っさいな」
ハラハラと、何枚か木の葉が落ちて来た。
ん? まさか上?
見上げると、木の上に人影が。
「登ってきてー、来れるだろー?」
え、私に言ってるの?
「すみません、姫様。隊長、すごい失礼な人なんです」
若い兵隊さんは私にそっと耳打ちした。
「聞こえてるぞー、ジャック」
「ひぃ、すんません!!」
私は意を決した。隊長がいる枝まで、一飛びする。
彼は木の幹に横になって、ここで寝ていたようだった。
「こんにちは、キアラです」
「お、噂の姫さんか。ようやく会えたなー」
起き上がった彼の顔、若い!! ひょっとして私より年下?
可愛い顔をしている。髪の色はミルクティー色、鳶色の瞳。
「あなたが隊長さん?」
「そうだよー、俺、ユーイン。ユーって呼んで」
「では、ユー君、年はいくつなの?」
「エドワードとタメだよ? 俺、あいつの親友なの」
エドワード様と同い年!? どんだけ童顔なんだ。
しかもあいつ呼ばわり、ある意味すごい。
「姫さん、突然だけど俺と手合わせしよう」
「え?」
「エドワードに頼まれてて。姫さんの相手してやってくれって。あいつ忙しいからねー」
言うなり、彼は枝から飛び降りてしまう。
私も後を追って下に降りる。
「ふーん、姫さんて風使いだろ? いや、風が一番得意だ。そうだろ?」
「ええ、確かに」
私は全属性中、風が一番得意だ。
「実は俺もそうなんだ。いや俺は風しか使えないんだけど。それでさー」
彼は腰に帯びた短剣を両手で抜いた。
「双剣使いなの?」
「そー」
エドワード様が彼を私に会わせたがった理由が分かった。
私は集中して、両手に光の短剣を創り出す。
「やっぱそれ、作れるんだねー。賢者スゲーなー」
「いくよー?」
言うなり、彼は私に向かって攻撃を仕掛ける。
動きが早い!!
小柄で、身が軽い、私と同タイプだ。
私は、受け流して身を翻し、反撃に出る。
彼は攻撃を剣で受けて鍔迫り合いの格好に。
私は距離を置く為、後ろに飛び去り、再び攻撃に転じる。
何度か攻撃しあった後、彼が一言、ポツリと呟く。
「一段上げるねー」
途端、彼の攻撃の速さが増す。私は防ぎきれず、弾き飛ばされてしまった。
「!!」
「姫さん、せっかく魔法使えるんだから、もっと乗せないと」
「乗せる?」
「剣に魔力を乗せるんだよー、姫さん元々格闘スキル持ちだろ? 身体に頼り過ぎなんだよなー」
ユー君は、木の枝で地面に絵を描き始めた。
「姫さんは攻撃の際に、魔法の力乗せてないんだよ。攻撃する時に力を乗せると、スピード、威力全部上がるよ」
「例えばパンチを打つにしろ、魔力を乗せると、こう」
「姫さん、魔力はめちゃくちゃ高いんだから、攻撃に乗っけさえすれば、俺なんか手も足も出ないよー」
私は試しに短剣を一振り、言われた通りに意識してやってみる。
「!!」
風を帯びた剣の空を切る音が、明らかに変わった。
「そーそー、そんな感じ」
「んじゃ、も一回いくよー」
次はもう負けない。そんな確信があった。
「ほらねー、コツさえ掴めば出来るだろー」
「ごめんなさい、怪我させちゃって」
私は加減出来ずに、ユー君の額に少し傷付けてしまった。
「平気平気、姫さん回復魔法もお手の物だろ? 役得役得」
両手で回復魔法をかけていると、ユー君が、私の胸辺りを凝視していた。
「え?」
「胸の所、切れてるなーって」
見ると、ブラウスの前身頃の胸の辺りがざっくり切れて、下着が覗いていた。
「ピンクだなー」
「!!!!!!」
バキっ!!
か、可愛い顔してどこ見てくれんだ、このエロガキ!!!!
エドワード様すら、ちゃんと見たことないのに!!
もちろん、この後治療は続けましたよ?
ただし、完全に気絶させた上で。
早速のブクマ登録ありがとうございます。
思ったよりPVが多くてビックリしております。
毎日更新を目指して頑張りますので、生温かい目で見守って下さい。




