第四十三話 屍人の軍団(エドワード視点)
登場人物紹介(現時点までのネタバレ有り)
キアラ……本編主人公。異世界からの転生者でエルフの賢者。母親が精霊の半神。エドワードの婚約者。エルフの里から嫁に行く当日に攫われる。ストロベリーブロンド、深緑の瞳。
エドワード……もう一人の主人公。美形の王子様。賢者の一人で、父親が精霊の半神。紆余曲折を経て魔王として覚醒。王太子位を辞退し、魔術師ギルドマスターに就任する。本来はやんちゃなドS。長い白金髪、アイスブルーの瞳。
アーサー……エドワードの異母弟の第二王子。エドワードが国王の実子でない為、実際の血の繋がりは薄い。母親が人狼国の王女な為、優性遺伝で彼も人狼。洞察力に優れる。銀髪、琥珀色の瞳。
キース……アーサーの従兄弟で護衛。人狼国の第六王子。アーサーの身の回り世話を殆ど一人でこなす。真面目で寡黙。エドワードと並ぶ天才で美形。エドワードと学生時代から親しい。
黒髪、琥珀色の瞳。
ルシア……エルフの里の賢者。見た目は幼女。キアラの親戚にあたり、娘同然に可愛がる。エドワードの師匠の師匠。
金髪に紅い瞳。
リチャード……人狼国第四王子。キースの実兄。黒狼族の次期族長。国王の後継者争いに勝つ為に、エルフの賢者であるキアラを花嫁とする為に攫う。黒髪、琥珀色の瞳。
レスター……人狼国第二王子。キースの異母兄。銀狼族。母は正妃。リチャードと対立する後継者の最有力候補。黒狼族の村に滞在していたキアラを攫う。銀髪、青い瞳。
襲撃と聞いて、すぐ僕は何かがおかしい事に気付いた。
こんな時間に、しかも一気に押し寄せて来ただなんて。
北の蛮族と聞いてはいたが、その正体はトロール、いわゆる巨人族だ。人語を解さないので、意思疎通は不可能だ。
彼らは概ね野蛮で、人を見れば襲う。
集団で行動はするが、協調性はあまりなく、どちらかというと個の力で戦うタイプだった。知性はあまり高くない。
ここよりもっと北の地に、奴らの巣があるらしい。
度々人の住む場所を襲っては、理不尽な暴虐を繰り返す。
ここ、黒狼の村でも昔からその襲撃に何度となく苦しめられてきたらしかった。
「あれはなんだ?」
でも僕の前に現れたそいつらは、明らかに生者のモノではなかった。
辺りに漂う鼻をつく死臭。
変色して、腐り落ちる寸前の体。
「アンデッド? どういうことだ?」
「おい、エドワード! ぼーっとするな!」
大剣を振りかざしながら、リチャードが僕をどやす。
「誰にものを言っている?」
相手がアンデッドなら、とっておきの魔法がある。
僕は意識を集中し、広範囲に光の範囲魔法をかけた。聖なる属性のそれは、アンデッドには効果覿面だ。
瞬く間に奴らは土に還り、二度と蘇ることはない。
「火も有効だぞ」
光魔法を使えないであろう、リチャードにアドバイスする。
彼は、大剣に術で炎を纏わせ、一気に敵をなぎ倒していく。
それにしても物凄い数だ。
僕は涼しい顔で、状況を眺めて見てられるが、リチャードはそろそろ肩で息をし始めていた。
「キース、どこだ?」
僕は、少し離れた場所で展開される光の範囲魔法を目にした。
あそこか。
すぐさま転移して、キースの目の前に降り立つ。
「リチャードがそろそろ限界だ。お前はいけるか?」
「はい」
相変わらず、涼しい顔だ。キースの力も底が知れない。
僕の一つ下の、アカデミーにいた頃からの後輩。
始めは生意気な新入生がいると聞いて、シメに行ったんだっけか?
実際にキースが生意気という訳ではなくて、周りが彼に嫉妬して、あらぬ噂を立てただけだった。それは彼が人狼だったから。
度々、師匠による修行の為、学校を休む僕に、なぜか一年下の彼が配布物などを届けてくれるようになった。
まあ、その理由は彼も離れているとはいえ、同じ王宮住まいだったからだが。
いつの間にか打ち解けて親しくなった。
性格の悪い僕にでも、彼は裏表なく接してくれた。
決して媚びへつらうこともなく、時には行き過ぎた僕を咎めてくれたりもする。
弟のアーサーに会うよりも、キースと会う時間の方が長かった。思えば、僕と対等にいれる存在は、アレク以外では初めてだったのかも知れない。
光の範囲魔法を発動させながら、僕は原因を考えていた。
これは、おそらく今まで倒した全てのトロール達では?
数にして、ざっと万を超える。到底、ここの村の人間達だけでは対処出来る数ではなかった。
「埒が明かないな」
「リチャードの援護に」
「あ、向こうは時限式の魔法を展開してきたから大丈夫だ」
時間が経つと、おいおいに光の範囲魔法が発動する。リチャード達の周囲に置いてきたので、しばらく向こうは平気な筈だ。
「やはり、エドワード様は巧者ですね。感服いたします」
「お世辞はいいから、魔法をどんどんぶっ放せ」
今、ここの一角が村へ通じる一番重要なルートだ。
ここでこいつらを食い止めなければ、村は全滅してしまうだろう。
村にはキアラもいる。
彼女は今、魔法を封じられ戦うことも出来ない。
彼女が戦えたら、いい戦力になっただろうに。
だが、魔法が使えたとしても、彼女を駆り出すわけにはいかない。身重の彼女を絶対に危険な目には遭わせられない。
「下を頼む。僕は上空から広範囲に焼き放つ」
このままでは埒が明かない。
僕は変異して、上空に飛び立つ。
魔王の姿の方が、より魔力が高まるのが分かる。半神の時よりもそれは段違いに。
僕は、この目に映る範囲全てに有効な業火の術をかけた。
一斉に奴らが火の海に変わる。
僕の戦力は、冗談なのかよく軍の一軍に例えられたけど、今はそれを地でいってるな。
僕はうずうずしていた。魔法をぶっ放すだけでは、やはり面白くない。
僕は術で光を帯びた剣を、両手に作り出した。
そのまま、空中から火の海に突っ込んで、死に損ないの敵をなぎ倒していく。
どれほどの時間が経ったのか、空が白み始めた頃には、僕達の前に立っている敵はいなくなっていた。
「さすがです。エドワード様」
キースがそっと隣に並んだ。
「お前だって、やっぱり普通でないよ」
彼の戦果も相当なものだ。あれだけ魔法を使っていたのに、魔力が枯渇している様子もない。
一体、彼はどれだけ魔力を有しているのか?
「リチャードは平気かな?」
「問題ないようです。本当にありがとうございました」
僕は一つ伸びをして、さっさと彼女を迎えに行かなければと思っていた。僕をただ、待っている彼女を。
いつもありがとうございます。
あらすじが長ったらしいので多少修正し、登場人物が増えてきたので、簡単な紹介を前書きに付けました。
明日も二話更新予定です。
よろしくお願いします。




