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第二十ニ話 エルフの賢者

「さて、ここです。賢者がおられるのは」


 私達は、相当大樹を登ってきていた。一際大きな枝の先に、立派なツリーハウスが建っている。


「ようきた、風の姫、そして水の半神よ」


 この人がお師匠様のお師匠様、私と同じエルフの賢者。


「私が火の半神、ルシアだ。この世界で一番年長の賢者だな」


 私達は丁寧に揃ってお辞儀をする。

 エドワード様が畏まりつつも、性急に問いを投げかけた。


「師匠の師匠、面倒なので大師匠と呼ばせて頂きます。霊山の瘴気に耐えられる術を教えて下さい」


「ふむ、事態は一刻を争うか。お前の兄同然の者が、闇の精霊王の器となってしまったのだったな。結論からすると、方法はある」


 私達は、はっと顔を上げた。


「お前達は知らぬかも知れぬが、本来我らの持つ四属性と闇と光の二属性は似て非なる別の精霊の力。我らは大地や風、炎や、水、自然に由来する精霊から力を得ておる」


 そう言えば、エドワード様のお師匠様もそんな事を言いかけていたっけ?


「我ら四属性は、互いに相克する力だ。水は火に強く、風は地に強く、火は風に強く、そして土は水に強い」


「だが、この我らの法則から外れる属性が光と闇だ。これらは互いに有利で弱点を兼ねることは勿論知っているな?」


 ルシア様は全ての属性の術を小さく発動させ、実際にぶつけて動かして見せた。

 法則通りの条件で術が打ち消しあう。

 最後に、光の球と闇の球がぶつかり、小さく弾けて共に消えた。


「瘴気は闇の属性だ。つまり、闇に打ち克つには、光」


 先程より大きな光の球と、小さな闇の球をぶつける。

 闇の球が消滅して、光の球だけが残った。


「光の術の応用だ。これを全身に纏わせる。これを維持すれば瘴気の中でも動ける」


 ルシア様は、全身を覆うように光の膜で覆う。

 さすがに全部光で覆ってしまう発想はなかった。


「我らは半神だ。それぞれ親の属性魔法が最も得意だが、光も得意な筈だ」


 確かに、自分の親の属性の魔法が一番得意だけど、確かに光も得意の範疇で扱える。


「光と闇は精霊というより、天使と悪魔だな」


 ルシア様はさらに続けた。


「便宜上、光の精霊王、闇の精霊王と呼称しているが、それは我らこの世界で生きるヒトが付けているだけなのだ」


 天使と悪魔。闇の精霊王は悪魔、つまり魔王だと。


「根本を解決するには、天の力を借りる。つまり光の天使の力。闇の精霊王、つまり魔王退治は、天使に任せるしかない」


 ──そんな天使なんて。

 私の知る限り、天使を降臨させた事実はない。あくまで、歴史上の事実かどうかも怪しい記録だけだ。


「そなたらの国に、初代国王の復活の予言があったろう? あれは正確には、国王そのものが復活する訳ではないぞ?」


 そしてルシア様は衝撃の事実を告げる。


「初代国王に降りたと言われる精霊神、それこそが実は光の天使なのだ。我ら半神は、実は少なからずその天使と同化した国王の血を受け継ぐ子孫なのだ」


 ええ!?


「我らは異種族だが、混血は可能だ。遥か昔の事だが、どこかで天使の血を受け継いでいるのだ」


 ルシア様はドヤ顔で、話を続けた。


「王家の者となれば、その血はさらに濃く受け継がれていよう。さすればそなたの兄も」


 エドワード様は、ここでピンときたようだった。


「天使をアレクに降ろすのですか?」


「──条件は厳しいが。既に闇が降りている。だが、不可能ではない」


 アレク様の中で、天使と悪魔が戦いあう。天使が勝てば、闇を祓え、彼を助けられる。


「霊山の瘴気は、異界の口が開いていて、そこから闇の、魔王の屍体から瘴気が生まれている。異界の口を閉じねばならぬ」


 彼女は厳しい顔をして続けた。


「確かに闇の精霊王の降りた身ならば、異界の口にも容易く近付く事は用意であろう。だが、それを閉じるには相当な魔力が必要だ。おそらく、魔力を使えば使うほど、魔王の力が増して、早く覚醒するであろう。覚醒した魔王は、果たして瘴気を祓おうとするだろうか? 答えは否だ」


 やっぱりアレク様、一人では到底無理なんだ。早く止めないと。


「しかし、光の精霊王、天使を簡単に降ろせるのですか? 光の結晶石は必要では?」


 エドワード様の疑問は最もだった。召喚には結晶石が必要なのだ。


「光の結晶石ならば、ここエルフの里にある」


「!!」


「そなた達の子は、予言通りなら、生まれながらに天使の力を受け継ぐ。本来ならそれがベストだったのだが、幸い結晶石はここにあり、そなたの兄は魔力のない稀有な者だ。少々手荒いが、我ら四人の賢者の力があれば、闇を抑え付けて光を降ろすことは可能だ」


 そう言って、ルシア様は立ち上がった。

 立ち上がると、なお小さいことが分かる。見た目は完全に子供だ。こんな事言ったら失礼かもだけど、すごく可愛い。


「そうと決まったら、イワンを呼んでこねば。あのジジイは息災なのか?」


「少々、呑んだくれていますが、元気ですよ」


 お師匠様、イワンて名前なんだ。

 確かに呑んだくれてたなぁ。でもお二人が協力してくれるなら、何とかなる気がする。


「ここからは封印のお陰で、転移魔法は無理だ。どれ、私が呼んでくるから、そなたらは少しでも休んで魔力を回復しておけ」


 さすがルシア様、私達が魔力を消耗していることもお見通しなんだ。


 部屋から出て行くルシア様を見送ると、シエルさんが入れ替わりに入って来た。


「どうぞこちらへ。あなた達の部屋を用意しました」


「ありがとうございます」


いつもありがとうございます。

夜にもう一話更新予定です。


次の話はちょっと際どいかもしれないです。

元々15Rにしてはありますが、苦手な方は飛ばしてください。

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