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第二十話 王子様との再会

 温かい魔力が私に流れ込んでくる。

 柔らかな波動が感じられ、自分の中の魔力が補填されるのが分かる。

 唇から感じられるそれ。口移しで魔力を移されている?

 重たい瞼をようやく開けると、唇を外された。

 目の前に懐かしい顔、アイスブルーの双眸がまっすぐに私を見つめた。


「エドワード様?」


「ああ、キアラ良かった!」


 そう言って、物凄い強い力で抱き締められた。


「僕の魔力を少し移した。これで動けるようになる筈だ」


 私は彼に抱き締められたまま、重要な事を思い出す。


「アレク様は? アレク様はどこですか?」


 体をようやく離して、エドワード様が言った。


「分かってる。アレクを助けなければ」


「お願い、彼を助けて。闇の精霊王が彼を乗っ取ってしまう!」


 私は取り乱したように、彼に縋り付いた。

 早くしなければ! 彼が彼でなくなってしまうのに。


「落ち着いて、キアラ」


 彼は優しく私を宥める。エドワード様がいれば、きっと何とかしてくれる。そんな安心感が私を包む。


「アレクは霊山に向かっている。あそこは瘴気が強くて、僕ら半神は近付けない」


「そんな!!」


 近付けないのに、どうやって助けに行けばいいの?


「少し時間はかかるが、一つだけ手はある」


「それは?」


「エルフの森へ行く。エルフなら、瘴気を一時的にでも、どうにかする術を知っている筈だ」


 エルフの森? しかしエルフはここ百年以上、人との接触を絶っているのでは?


 私が怪訝そうにしていると、彼はちょっと笑って言う。


「エルフの森に人は入れない。だが、エルフなら?」


「私?」


「君自身が鍵だ。人は受け入れられなくても、君は同族だ。必ず入れる」


 エドワード様はさらに続ける。


「霊山の瘴気がこのまま溢れれば、エルフの森にも少なからず影響が出るだろう。この国にある限り」


 瘴気は魔物を喚ぶだけでなく、人の生気を無くし、いずれ病にしていく。生きとし生けるものは魔物以外、そのうち存在出来なくなってしまうのだ。


「エルフにもいい加減動いて貰わなければ。それくらい頼んだって、バチは当たらないだろう?」


「そうですね」


「それで、エルフの森に行く前に少し寄るところがある。僕の師匠の所だ」


 エドワード様のお師匠様? 賢者の一人だと聞いている。


「今、この世界に半神と呼ばれる賢者は四人だ。僕らと僕の師匠、そして師匠の師匠」


 お師匠様の師匠も賢者なの?


「そして、彼女は君と同族なんだよ。僕も会ったことは勿論ないけども。エルフの森が閉じられる前、最後に会ったのが僕の師匠の筈だ」


 エルフの森が閉じられた理由、それすら明らかになってはいない。一体エルフ達に何があったと言うのだろう?


「君がいるから、森には入れるだろうけど、賢者と会うとなると話は変わる。エルフはものすごい人見知りだからね。念には念を入れて、師匠に一筆書いて貰っておく」


 私はメイドさんに着替えを用意してもらい、ついでにここが王宮内であることを知った。

 メイドさんの衣装は、王宮内でデザインが共通だからだ。


「お祖母様が、転移魔法でここに移したらしいな。彼女は宣託の巫女。賢者ではないが、それに次ぐ魔力を有してる」


 道すがら、私はエドワード様から様々な真実を聞かされた。

 闇の精霊王の復活に、彼のお祖母様の暗躍があった事。

 アレク様が始めから、闇の精霊王の器として生まれてきた事。

 初代国王の復活が、瘴気の蔓延にもう間に合わない事。


「お祖母様の予言は、今まで数々的中してきた。君の出現さえ」


 私の事も?


「あの日、あの辺境の町へ、僕に視察に行けと指示したのは彼女だ」


 あそこで闇の欠片による暴走事故があり、私達は初めて知り合ったのだ。


 あれからまだ、二ヶ月半しか経ってないのに。


 私達は転移魔法で、あっという間に彼のお師匠様の住まいに着いた。


 ──ここは崖?

 岩山の崖の上に、岩壁をくり抜くようにして家が建っていた。


「師匠はドワーフ族だ。ここはドワーフ族の土地だよ」


 私達の国より、はるか遠くの大陸の地だ。

 転移魔法って改めて凄いと思う。


 エドワード様は呼び鈴も鳴らさず、勝手知ったる我が家のようにして、家の中に入って行く。


 通路の天井はやや低い。エドワード様は頭がぶつかりそうになっている。


「うう、思ったより身長が伸びたみたいだ」


 エドワード様といい、アーサー様といい、キースさんといい、アレク様といい、みんな私からしたら大き過ぎなの!


 しかもみんな王子様で、みんなイケメンと。

 今さらながら、私の周りイケメン王子だらけだなぁ。


 狭い通路を抜けた先が、ちょっと広めの居間になっていた。


「師匠! 師匠いませんか?」


 ソファにテーブル、調度品全てが普通サイズよりやや小さめだ。


 テーブルの上にはお酒だろうか? 空のジョッキがいくつも転がっていた。

 辺りを見回すと、ソファの陰からブーツが覗いているのが見える。


「エドワード様、あれ」


 私が教えると、エドワード様はソファの裏に回り込んで、床に寝ているお師匠様を見つけた。


「起きて下さい、師匠! 急用です!!」


 そう言いながら、彼はお師匠様をげしげし足蹴にし始めた。


 ええ!?


「早く起きないと、ずっと蹴り続けますけどいいですか?」


 やっぱりエドワード様は、ドSだ!

 痛くないのかな? あんなに蹴られているのに、なかなか起きる気配がない。


 エドワード様は、とうとう両手に光球を作り出し、それをお師匠様に向けた。


 え、それはさすがにヤバイんじゃ?


「待った待った! さすがに起きるから、それは勘弁じゃ」


 小柄なドワーフのお爺さんがようやく体を起こした。


「あなたの弟子が大変な事になってますよ」


 エドワード様の言い方はかなり冷たい。この二人に何があったのだろう。気安い関係なのは勿論分かるのだけど。


「それはお前さんの事か?」


「僕もそうですけど、アレクの方です。闇の精霊王の器にされてしまいました」


「何じゃと!?」


 お師匠様は驚愕し、顔色が変わった。


「お祖母様の差し金です。もうアレクは霊山に向かってしまいました。覚醒するのも時間の問題です」


「なるほど、後を追うにも半神のお前らでは無理だと」


 エドワード様は厳しい口調で話を続けた。


「師匠の師匠、エルフの賢者なら、一時的にでも瘴気を何とかする術を御存知では?」


「エルフ族は邪気を浄化する能力に長ける。瘴気を抑える術も勿論承知じゃろう。そうか、嬢ちゃんがいるのか!」


 お師匠様は、エドワード様の意図をようやく全て理解したようだった。


「嬢ちゃんは、風の精霊王の娘じゃな。わしの師匠とは違う。師匠は火の精霊王を父に持つ」


 お師匠様は私の瞳を見つめて言った。


「ちなみに師匠の母君は土の精霊王だ」


 私は言われて気付いた。

 エドワード様の真の父君は、水の精霊王だと言う。

 これも何かあるのだろうか?


「四人の賢者は、全員属性が違うのですね」


「四属性は、兄弟のような関係じゃ。恐らく世界の均衡にも色々関係しておる。だが、光と闇はちょっと違う」


 お師匠様はちょっと考えるようにして、


「まあ、それよりエルフの森へ行きたいのじゃな?」


「そうです。もう一刻の猶予もありません」


 お師匠様は戸棚に向かい、何やらゴソゴソ漁り始めた。

 何か光る棒状の物を、エドワード様にポイっと放った。


「これは!?」


 それは小さな銀色に光る短剣だった。


「それはミスリル銀で出来た、わしの師匠から貰った物だ。それを見せれば、師匠に会うのは容易いだろう」


 ミスリル銀、聞いたことがある。とても貴重な鉱石だ。


「アレクはお前の血縁で、兄弟子で、兄同然の存在じゃ。闇の精霊王の器とされても、師匠ならば何か救う手立てがあるかもしれん。わしからも頼む。あれを救ってやってくれ」


「言われなくても、そうしますよ」


「嬢ちゃん、久方ぶりじゃが、お前さんはわしを覚えておらんだろう? アレクはお前さんにとっても大事な者の筈、エドワードに力を貸してやってくれ」


 私は頷いた。

 あの幼い日に、アレク様が養生してうちを去る時、迎えに来たお爺さんが、このお師匠様だったのね。


「師匠に会ったら、よろしく言っておいてくれ」


 私達は、転移魔法でそのままエルフの森へ飛んだ。

いつもありがとうございます。

思ったより多くの方に読んで頂いてるようで恐縮です。評価も頂き、ますます励みになります。


本日は余裕があるので、夜にもう一話更新予定です。


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