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第十五話 王子様との再会

 目を覚ますと、私は豪奢なベッドの上だった。

 まだ頭が冴えず、ぼーっとする。


「気が付いたかい? ずっと眠っていたんだよ」


 私を心配そうに覗き込む、綺麗な顔。


「今何時ですか?」


 彼は、ベッドサイドに置いてある水をグラスに注いで、私に手渡した。


「もう夕刻だ。ああ、ゆっくり飲んで」


 窓の外はだいぶ薄暗い。ヴィクター君は心配しているだろう。

 うまく飲めずにむせた私の背を、優しくさすってくれる。


「帰らないと」


 私は立ち上がるが、眩暈がひどくてすぐによろめいてしまう。


「まだ、起きてはダメだよ」


「連れがいるんです。きっと心配しています」


「分かった。私から連絡しておこう。連れの滞在場所はどこだい?」


 この場合、学校だとちょっとまずいよね。

 そうだ!  魔術士ギルドだ。エドワード様に連絡をしておけば、きっと皆に伝わるだろう。


「魔術士ギルドの支部長へ、私が無事だと」


「了解した。人に頼んで行かせよう」


 そう言うと彼は立ち上がり、部屋を一旦出て行った。

 ここはどこかの宿だろうか。結構良い部類の部屋だ。


 どうしてまた、アレク様がこんな北の国いるのだろう?


 しばらくして戻ってきた彼は、言いづらそうに私に告げる。


「すまないが、事情が変わった。君の身柄は私が預かる」


「どういうことですか?」


「今は詳しくは言えない」


 その時に、部屋のドアをノックする音が。

 彼は私に頷いて、応対に出た。


「彼女はダメだ。危険な真似はさせられない!」


 アレク様の荒げた声。

 一体、誰と何を話しているの?


 やがて数分の押し問答の末、部屋に一人の怪しいローブ姿の

 中年の男が入ってくる。

 アレク様はとても苦い顔をされていた。

 どうやら、彼には望まない来訪者のようだ。


「お初にお目にかかります。エルフの姫よ」


「どちら様?」


「私は闇の精霊王を信奉する闇黒教というものの、教祖を務めております」


 闇黒教!?  まさか一連の事件に関係しているという?

 どうしてアレク様の部屋に、そんな人が入って来るの?


「アレクサンダー殿下とは懇意にしておりまして。こちらに姫がおられると聞いて、挨拶に参りました」


「私に何かご用ですか?」


「大いにありますとも。私達は今、闇使いの者を探しております。国内を追われ、こんな北国まで逃れてきましたが、よもや賢者である姫にここでお会い出来るとは。何という幸運」


 ついに来た!!

 まさか、こんな所で引っかかるとは。


「どうか姫よ、あなたのお力をお貸し下さい」


 そう言って、教祖は懐から一つの指輪を取り出した。

 黒い宝石が嵌め込まれた銀色の指輪だ。

 これが闇の欠片?


「姫がほんの少し、魔力を注いで下されば、我らの大願が成就されるのです」


「これに魔力を注ぐとどうなるのですか?」


「闇の結晶石に闇の力が満たされて、闇の精霊王を喚ぶことが可能になります」


 アレク様が、たまらず教祖と私の間に割って入りながら言う。


「キアラ、これは危険な行為だ。応じてはいけない」


「アレクサンダー殿下」


 教祖が静かに言葉を継いだ。


「闇の結晶石に闇の力を満たすのは急務です。あなたはすでに我々に手を貸している。今さら、引き返す事など許されない」


「──しかし」


 アレク様は、言葉を一旦飲み込んだ。

 しかし、やがて震える声で衝撃の事実を発した。


「これは最後の闇の欠片だ。伝承によると、最後の欠片に魔力を注いだ者は、闇の精霊王の贄となる」


 私は絶句する。そんな事って!?

 このまま魔力を注げば、私は生け贄にされてしまうの?


「キアラを贄にはさせない」


 アレク様は教祖を睨みつけながら、強く言い放った。


「では、他の者が犠牲になるだけです。しかし、姫の魔力の高さは、闇の精霊王から見てもとても魅力的でしょう。他の者を選んでも、精霊王自身が姫を贄に選ぶ可能性は高い」


 教祖は余裕の表情で、話を続けた。


「だったら、私は闇の精霊王の召喚を阻止しよう」


「アレクサンダー殿下! 今さら何を言い出すのです? 霊峰の瘴気は徐々に濃くなり、そのうち世界を覆い尽くすまでになるでしょう。これを阻止できるのは闇の精霊王その人だけです」


「何か他の方法を探すまでだ」


 アレク様の意思は固そうだ。

 そんな彼に、教祖は諦めずに諭すように言った。


「あなたが魔力を持たず生まれたのは何の為ですか? かつて初代国王もその身に精霊神を降ろしました。彼も己の魔力を持たなかったから器として受け入れられたのです。精霊神と同化して彼は国を建国しました。あなたも自分の運命を受け入れるべきです」


「私はともかく、キアラを犠牲には出来ない」


「でしたら、あなたが闇の精霊王に打ち勝てばよろしい。完全にあなたが精霊王を制御すれば、姫を犠牲にせずとも良いでしょう」


 出来るの? そんなことが?

 しかし、闇の精霊王は他の精霊王と違って堕ちた神。そんな堕神を降臨させるなんて、やっぱり危険なのでは?


「アレク様、いったいどういう事なんですか? 闇の結晶石はどこにあるんですか?」


 アレク様は、私から視線を逸らし、唇を噛み締めて振り絞るような声で呟いた。


「闇の結晶石は、私が持っている」


「殿下、あなたは王族として生まれ、国を救う為、一度はその身を捧げると約束をされました。もう引き返せませんぞ!」


 教祖は、私に向かって言った。


「姫よ、あなたもこの国の妃同然の身となれば、理解して下さるでしょう?」


 まさかアレク様が国を救う為に、こんな風に暗躍していたなんて知らなかった。自らの身を捧げるつもりだったなんて。

 闇の精霊王を降臨させるなんて、とても怖いけれど、きっとエドワード様が何とかしてくれる。

 それにここで私がやらなけらば、誰か他の人間が犠牲になってしまう。

 ──それだけは避けねばならない。


「やります」


 怖いのは私だけではない。アレク様だって同じだ。


「キアラ、ダメだ」


 彼は掠れた声で呟いて、私を見る。

 私はそんな彼の手を握る。


「あなたを信じます」


 まっすぐ彼の紫の双眸を見つめた。

 震える睫毛が、その瞳を閉ざす。


「分かった」


いつも読んで下さりありがとうございます。

決して万人受けするものでなく、書きたいものをと思って頑張っています。


更新が明日以降、一日一回になります。

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