第十話 潜入捜査の打ち合わせ
私達は出発前日、全員で集まって潜入捜査前の最後の打ち合わせをした。
「えっと、私は人狼国貴族のローウェル家の縁者で、名前をクララ・プライスでいいのね?」
エドワード様が手配した学校では、その名を名乗ることになる。
「アーサーは、グレイ・ローウェル、キースは本名のまま。ヴィクターはヴィクトリアで」
「了解っす!!」
そう元気良く応えるのは、女装して私に付いてきてくれるヴィクター君だ。
薄茶の髪に琥珀色の瞳の、目のぱっちり大きな可愛い男の子だ。お兄さんは、切れ長なのに。あんまり似てない。
「ローウェルの名前使って平気か?」
アーサー様が不満げに呟く。
「ローウェルは王家を始め、分家も全てローウェルです。ローウェル姓の人間など、ごまんといるので、平気です」
とキースさんが返す。
「キアラの素性がバレなければ平気だ。あくまで囮は彼女だから。お前達はたとえバレても、お忍びで留学とか、いくらでも理由は付けれる」
「姫ちゃんが、バレなければいいんだよね? でも、人狼国でもエルフはさすがに珍しいけど、怪しまれない?」
「うーん」
ヴィクター君の問いに、さすがのエドワード様も押し黙る。
「こうするしかないでしょうね」
そう言って、キースさんは私に黒いカツラを被せ、サイドの髪を緩く結い上げて耳を覆った。
「おお? 割といいんじゃね?」
アーサー様が私の顔を覗き込む。だから、顔が近いって!!
「人間で通すしかないか」
エドワード様の一つの懸念。人狼国は人間に排他的な国。
「エルフ族は百年程前から、外界との交流を絶ってしまいましたからね。今いるエルフ達は、世界に数人で、しかも皆見た目はともかく若くはないでしょう。さすがにエルフとしての素性は隠すべきです」
キースさんの言う事はもっともで、反論の余地がない。
「一ついい方法があるぜ?」
アーサー様が得意げに呟いた。
「何だ? 言ってみろ、アーサー」
「俺の婚約者ってことにする」
「却下」
即座にエドワード様が応える。早っ!!
「何でだよ! 人狼国のやつらは確かに人間嫌いだが、その人間の連れ合いが亜人なら、話は変わるんだぞ?」
「え、どう言う事ですか?」
「逆に見直すんだよ。亜人を差別しない人間なんだって。だから、俺の婚約者として連れてい」
バキっ!!
エドワード様の裏拳が弟君に炸裂した。もちろん加減はしてるだろうけど。
「──っ痛ぇ!! 何すんだよ、クソ兄貴!!」
クソ兄貴って言った!!
「エドワード様の裏拳が弟君に炸裂した。もちろん加減はしてるだろうけど。婚約者として設定するなら、お前でなく、キース」
エドワード様はキースさんを一瞥して、続けた。
「君に頼みたい」
「!!」
キースさんは自分が指名されて、面食らったようで、真っ赤になって俯いてしまった。
「いえ、私には、その」
「キースは女が苦手だからな」
アーサー様はがぼやく。
「だから適任なんだ」
エドワード様は、そのまま話を続ける。
「我が国でも、亜人に対しての差別は残っている。これはこれからこの国を担う人間として、責任を持って対処していくつもりだし、必ず何とかすると約束する。だから、頼む」
「分かりました」
溜め息をついて、キースさんが了承した。
「ま、婚約者設定の方が、始終べったり出来るからな。ちょうどいいんじゃね? あー、俺がやりたかったけど!」
そう言って、アーサー様は未練がましく、私を見てくる。
「お前は本当にキアラに手を出しかねないから、ダメだ」
「キースだって分かんないぜ? 意外とムッツリかも」
「そんなことは!」
反論するキースさんに、茶化すアーサー様。
「キースのことは信頼している。僕は現地の魔術師ギルド支部長として赴任し、君達を後方支援する。何か動きがあったら、すぐギルドに連絡を」
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
話が短い為、後ほどもう一話更新予定です。




