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異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


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第九十三話 封鎖都市

「ご苦労。場合によっては手出しするつもりだったが、要らぬお世話だったようだ。ドミネーションZも試用してくれたようで何よりだよ」


 博士は労いの言葉を述べながらルフトに近付いてくる。

 やはり平然とした調子だ。

 たった一人で大量のゾンビを葬ったとは思えない。


 白衣に付いた僅かな返り血だけが、彼の戦闘の跡となっていた。


「は、博士……」


 ルフトは掠れた声を発する。

 しかし、博士はそのままルフトを素通りすると、アルディの死体を調べ始めた。


「ふむ。爆発的な変異が起きて自壊したようだ。甚大すぎる肉体破壊によって生じた一種の防衛反応なのだろうが、未感染の肉を摂取できないと破滅するらしい。ウイルス適合者も万能ではないというわけか」


 博士は夢中になって解析する。

 ぶつぶつと間断なく語りながら、死体を丁寧に採取していた。


 その光景にルフト苦笑する。

 博士の奇行は今に始まったことではない。

 驚くこともなかった。

 むしろ、激戦が終わったのだと実感できて安堵できる。


 一通りの調査が済んだところで、博士はルフトに質問する。


「何か体調に変化はないかね」


「特におかしな点はなさそうですが……明らかに強くなっているのは確かです」


 ルフトは身体を見下ろしながら答えた。

 力が無限に漲ってくるような感覚。

 壮絶な戦いを経て衣服はボロボロだが、肉体そのものに傷はなかった。

 アルディから受けた怪我は残らず再生能力で治癒済みである。

 もはや人間ではないな、とルフトは自嘲した。


 そんな彼を観察する博士は満足そうに頷く。


「よしよし。これといった副作用はないようだな。ミュータント・リキッドが上手く中和しているようだ。君は運がいい」


「あ、ありがとうございます……?」


 ルフトは疑問形になりながらも礼を言う。

 色々と訊きたいことはあるものの、博士の助けなしでは掴めなかった結果なのは確かだった。

 感謝するのは間違っていないだろう。


(それにしても……)


 ルフトはふと真剣な表情で思考に耽る。

 脳裏に浮かぶのは、彼が殺したばかりの英雄の姿。


 死に際、アルディはルフトに感謝を述べ、肉体が朽ちていく中で延々と鼓舞してきた。

 一体、彼はどういった心境だったのか。

 ウイルスに適合した結果、アルディは意識を保ちながらも人間を喰らわねばならない存在となった。

 ドランの話を聞くに、元は善良な人物だったのだろう。


 そこから本能に精神を歪められたのか。

 如何なる苦痛があったのかは、ルフトには到底理解できない。

 ただ一つはっきり言えることがあるとすればそれは、あの戦いに勝利したのは間違いなくルフトであり、生き残ったからには先へと進む義務があるということであった。


 殺したアルディの分まで、このどうしようもない世界で歩み続けるのだ。

 新たに背負うものの重みを感じながら、ルフトは気持ちを切り替える。




 その後、ルフトと博士は破壊された北門と西門を封鎖した。

 博士の科学力で組成に細工をした瓦礫を、壁として成形して埋めたのである。


 残党とも言えるゾンビがやはり襲ってきたが、強敵を打倒したルフトたちにとって、それらの対処はさしたる負担にはならなかった。

 鮮やかな手際を以てそれらの工程をこなし切る。


 結果、外からゾンビが侵入することはほとんど不可能になった。

 こうしてパンデミックに陥った都市は、平穏への第一歩を進み出した。

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