表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/95

第八十話 秘策の一手

 床に倒れるルフトは、目の前の光景に唖然とする。


 魔剣の英雄アルディを一方的に傷付ける博士。

 超常的な科学兵器で圧倒していた。


(なんとかなるとは思っていたけれど、まさかここまでとは……)


 ルフトは改めて異世界人の規格外な力を実感する。


 博士は召喚された場所からほとんど動いていない。

 それなのにアルディの斬撃を無効化するばかりか、片腕を切断するように仕向けてみせた。


 博士は律儀にも攻防の手段を解説するも、ルフトにはさっぱり理解できない。

 瀕死の重傷を負い、出血量が多すぎるのも要因かもしれない。

 否、体調が万全でも知識不足で理解不能だろう。

 異世界の発達した科学を解せるほど、ルフトは秀才ではなかった。


「最新の魔術武器か? それにしても理不尽な攻撃だ……」


 アルディは苦々しげに腕の断面を押さえている。

 手を離すと、表面の肉が盛り上がって蠢いていた。


 博士の怪光線による効果ではない。

 断面の表面には小さな指のようなものが生えつつある。


 それを目ざとく発見した博士は、僅かに身を乗り出した。


「ふむ。再生能力か。それもかなりの速度で治癒している。これならば損傷を気にせずに行動不能にできそうだ」


 博士のおぞましい気配が膨れ上がる。

 彼にとってはまだ序の口なのだ。

 所詮、ここまでのやり取りはウォーミングアップに過ぎなかったらしい。


 アルディは脂汗を流しながら苦笑する。


「いやはや、本当に恐ろしいな……だけど、無性にあなたを食べたくなってきた。その血肉がどんな味がするのか、とても気になるよ」


「大人しくサンプルとして捕まってくれるのなら、喜んで提供しよう」


「悪いけどそれは無理だ。というわけで――ひとまず撤退するよ」


 言い終えたアルディは、床を爪先で蹴って硬質な音を鳴らす。

 ブーツの底が淡く光って瞬時に魔法陣が構築された。


 ルフトは魔法陣を見てその効力を察する。


「あれは転移魔術……!?」


 ルフトが理解したのも束の間、アルディの身体が魔力の光に包まれて消える。

 気配は完全に消えていた。


(このまま博士と戦うのは分が悪いと判断したのか……)


 どうやらブーツの底に万が一に備えた緊急脱出用の魔術を仕込んでいたらしい。

 確かに転移魔術は逃走に最適だろう。

 不意のピンチでも今回のように素早く離脱できる。


「なるほど、魔術にはテレポート系統の術式もあるのか。ますます面白いじゃないか。今度は逃げ出せないように対策せねば……」


 博士は感心した様子で頷く。

 アルディに逃げられたことに苛立ったリせず、むしろ面白がっている節すらあった。

 新たな発見を歓迎しているようだ。

 なかなかのポジティブ思考の持ち主である。


 ルフトは博士に話しかけようとして、声が出ないことに気付いた。

 それどころか全身に力が入らない。

 視界が急速にぼやけていく。


(あ、あれ……? これはまずいかも……)


 気の緩みか或いは肉体の限界なのか、ルフトの意識はそこで暗転した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ