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異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


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第七十一話 決断の時

「魔術学園へ避難?」


「はい。あそこは生存者にとって最も安全な場所です」


 首を傾げるドランに、ルフトは考えを頭の中で整理しながら述べる。


「魔術学園には、緊急時に作動する防御機構があります。それによって並大抵の脅威はものともしませんし、物資もそれなりに豊富です。周辺地域を探索すれば、ここにいる人たちが増えても十分に対応可能でしょう」


 魔術学園の防御機構は非常に頑丈な造りをしている。

 何層もの結界や障壁で構築されており、生半可な攻撃では掠り傷一つ付かない。

 仮に損傷しても空気中に含まれた魔力で自動的に修復されるので、恒久的な運用が可能であった。


(ドランさんたちが魔術学園に来てくれるのは大歓迎だ)


 魔術学園に冒険者たちの戦力が加わるのは非常に心強い。

 あの場所はまだまだ人手不足なのだ。

 万が一の時を想定した場合でも、このパンデミックを生き抜く冒険者たちの知恵と実力は頼りになるに違いない。


 ルフトの提案を受けたドランは、腕組みをして思案する。


「ふむ。確かにそれは魅力的だな。だが、魔術学園まではそれなりの距離があるぞ? この大所帯で移動するのは目立つ。通りはゾンビ共が大量にいるし、かと言って路地を使うと死角が多くて危険だ」


「それでも街の外へ行くよりは安全なはずです。もし無事に移動できたとしても、他の都市も同じ状況かもしれません。そうなった時、安全地帯はどこにも存在しませんよ」


「この街の状況は悪化の一途を辿っている。いくら魔術学園の守りが堅くとも、いずれ突破されるだろう」


「――その前に僕が街の平和を取り戻します。残り二つの門を封鎖して、都市内のゾンビを一掃します。魔術学園に頼めば、対空用の防御結界も張れるはずです」


 ルフトは真剣な眼差しでドランを見る。

 ここが正念場だった。


 逃げるばかりでは活路を開けない、とルフトは考えている。

 時には勇気を振り絞り、困難に立ち向かわねばならない。


 この街にはまだ希望と可能性が残されている。

 決して捨ててはいけない。


「皆で協力して安全な場所を築きましょう。ドランさん、お願いします」


「いや、しかし……」


 ソファを立って頭を下げるルフト。

 彼の説得に、ドランは難しい表情をして悩む。


 その時、部屋の扉が開いた。


「なかなかいいアイデアじゃない? 私はその子の計画に乗ってもいいと思うけど」


 聞き覚えのない来訪者の声。

 ルフトは反射的に目を向ける。


 そこにいたのは、濃紺のレザーアーマーにローブという出で立ちの女魔術師だった。

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