表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/95

第五十一話 背負ったものの重み

 南門跡に壁を生成したところで、ルナリカの足元に魔法陣が出現した。

 渦巻くそれは、召喚魔術の時間制限が訪れたことを示す。


 ルナリカは特に驚きもなく魔法陣を一瞥した。


「そろそろ帰れるみたいだね。帰ったらとりあえず上司の記憶を消して、欠勤を帳消しにしないと」


「ご迷惑をおかけしてすみません……でも、すごく助かりました! ありがとうございます」


 ルフトは素直に頭を下げる。


 感謝の気持ちでいっぱいだった。

 ルナリカの力がなければ、ここまで迅速に門の封鎖はできなかったろう。

 当初はほとんど乗り気ではなかったが、なんだかんだで彼女は貢献してくれた。


「困った時は、またお呼びしてもいいですか……?」


「オフの日じゃなければいいよー。それなら堂々と会社をサボれるし。そうそう、ルフトっちにかけたマジカルアーマーだけど、あと半日くらいは持続すると思うから。まあ、大変そうだけど頑張ってねー」


 気楽な調子で手を振りながら、魔法少女ルナリカは元の世界へと去っていく。


 残されたルフトは、余韻もそこそこに歩きだした。

 いつまでもこの場に留まっていられるほど暇ではないからだ。

 先を見据えて動かねばならない。


「次は東門だな……」


 脳裏に都市内の大まかな地図を描きつつ、ルフトは移動を始める。


 マジカルアーマーの効力があるうちに少しでも門の封鎖を進めておきたかった。

 この状態ならゾンビ化した魔物と戦える。

 仮に門が破壊されていたとしても、周辺の脅威さえ排除できればどうとでもなるのだ。

 あとで生存者に協力を募って魔術で塞げばいい。


(途中で魔法薬の店にも寄りたいな……いい加減、倒れてしまいそうだ)


 確かな倦怠感を覚え、ルフトはゆっくりと息を吐く。


 体内の魔力が枯渇しているせいで、意識を失いそうだった。

 まだ歩いていられるのはマジカルアーマーによる強化と、ルフト自身の純粋な気力のおかげである。


 ただ、このままではいずれ限界が来るだろう。

 体内魔力が自然回復するのを待っていては数時間かかる。

 自然回復以外で魔力を得るならば、やはり魔法薬の飲用が確実であった。


 本来ならしっかりと休息を取るべきなのだが、今は一刻も早く門の封鎖を進めねばならない。

 魔力さえ回復できれば、召喚魔術の連続行使も可能なのだ。

 異世界人を呼び出すことで、単独行動を避けられる上に門の封鎖も捗るだろう。


(ここで止まるわけにはいかないんだ……都市の平和さえ確保できれば、後でいくらでも休める)


 ルフトが自らを鼓舞していると、前方に数体のゾンビが現れた。


 布の上下を着た人間のゾンビである。

 元はただの市民だったのだろう。

 彼らは無意味な呻きを漏らしながら、遅々とした歩みで近付いてくる。


 その姿にルフトは憐れみを覚えた。


 されど情けはかけない。

 マジカルローブの力で片手に斧を生み出す。


「早く、この悲劇を終わらせないと……」


 誰にも届かない言葉を口にしながら、ルフトは静かに歩みを進める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ