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異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


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第四十四話 魔法少女の力

 家屋を後にしたルフトは、東西南北に設けられた門のうち最寄りの南門を目指していて移動していた。

 都市内の治安は悪化の一途を辿っている。

 今は暴徒が悪事を働くだけの余裕があるものの、いずれゾンビ化した魔物が中心部に侵攻して生存者を襲うはずだ。

 都市の崩壊は免れない。


 そのような最悪の事態を防ぐために、ルフトは危険地帯である門付近のエリアに行ってゾンビを殲滅するのだ。

 可能ならどうにかして門を封鎖するつもりだった。


(門が開いたままなら閉じる。もし破壊されていたら魔術学園に応援を頼もう。土魔術辺りで埋め立てできるはずだ)


 ルフトは今後の計画を脳内で整理する。

 かなり大がかりな上に幾多もの困難が立ちはだかっていた。

 しかし、皆で生き残るためにはこれしか手はない。

 ルフトには、自身を危険に晒してでも露払いをする覚悟があった。


 一方、隣を行く異世界人の女性――ルナリカは大きな欠伸を漏らす。


「ふわぁ……久々の無断欠勤、部長に何て言い訳しよう。あ、いつもみたいに魔法で記憶を飛ばしたらいいか。うん、全然問題ないわ」


 何かと物騒な独り言だ。

 顔を顰めたルフトは、ちらりとルナリカの様子を窺う。


 ルナリカは頭の後ろで手を組んで歩いていた。

 緊張や怯えなどは一切見られない。

 ただひたすらに気だるげだった。

 色鮮やかで綺麗な見た目が台無しである。


(魔法少女、と言ってたな。あまり詳しい説明はしてもらえなかったけれど……)


 ルフトのいるこの世界にも魔法は存在する。


 扱いとしては魔術の一種であり「体系化されていない古代の魔術」と定義されていた。

 今は一般的なものとなりつつある魔法陣の技術も魔法と呼ばれていた時期があり、名称に”魔法”と付くのもその名残りだ。


 ただ、ルナリカの魔法はこの世界のものとは違うらしい。

 変身の際、彼女は術式や詠唱に依存していなかった。

 魔力も感じられない。

 ルナリカ曰く、意志の力が大事らしい。


 名称が同じだけで実際はまったく別の技術なのだろう、とルフトは結論付けていた。


「ルナリカさんは、どういった能力をお持ちなんですか?」


 ふと興味の沸いたルフトは尋ねてみた。

 予め何ができるかを知っていれば、戦いの時も動揺が少なくて済む。


 魔法少女を自称し、あっさりと変身できるくらいだ。

 どのような力を持っていてもおかしくない。


 ルナリカはがしがしと髪を掻きながら答えた。


「うーん、強化イベントやら改造手術やら色々あったからなぁ。一言では表せないね――まあ、ああいう輩をぶちのめすだけの力は持ってるよ」


 ルナリカはゆらりと前方を指差す。


 そこには十人ほどの屈強な男たちがいた。

 それぞれが武器を携えてルフトとルナリカを見ている。


 彼らが湛えるのは下卑た笑み。

 嫌悪感を催す悪意を撒き散らしていた。


 ただの生存者ではない。

 暴徒である。


 見れば前方にバリケードや魔術で守りを固めた建物があった。

 いつの間にか暴徒の縄張りに踏み込んでいたようだ。


 暴徒はじりじりと近付いてくる。

 視線は派手な恰好のルナリカに注目していた。


 ルナリカは絶対零度の視線を返しながら手を掲げる。

 そこにピンク色の鮮やかな閃光が集まり、段々と何かを形成し始めた。


「ちょうどいいね。せっかくだから見せてあげるよ」


 閃光が治まった時、ルナリカの手にあったのは――黒檀色の無骨な大型機関銃だった。

 銃口付近には赤熱したナイフが装着されている。


 出現した武器にたじろぐ暴徒たち。


 それとは対照的に、ルナリカはニヒルな笑いを見せながら彼らに歩み寄る。

 無気力だった双眸には、加虐的な色が宿っていた。


「――あっと驚くマジカルパワー。最高でしょ?」


 返答を待たず、ルナリカは機関銃の引き金を引いた。

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