表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/95

第二十七話 最悪のタイミング

 A子は店内に向かって駆け出した。

 スタートダッシュを決めた彼女の加速は凄まじい。

 欠片の躊躇いも見せずに敵陣へと飛び込む。


 そんな彼女に向かってすぐさま矢が飛んできた。

 混乱の最中でも冷静な者がいたらしい。


「あはっ、いい攻撃だね」


 A子は嬉しそうに首を傾けて回避した。

 続けて飛来して分は包丁で弾く。

 尋常ならざる身のこなしと動体視力の賜物であった。


 勢いを緩めずに店内へ突入したA子は、さっそく近くにいたクロスボウの射手の首を薙ぐ。

 鮮血が床に触れる前に二人目の顔面を蹴り飛ばし、商品棚に吹っ飛ばした。


 ひっくり返る商品棚。

 その向こうから斧を掲げた男が迫る。

 散らかった室内で豪快に横薙ぎの一撃を繰り出してきた。


「うおおおおおおぉぉっ」


 大柄な体躯を活かした力強い踏み込みだ。

 距離を取ろうとしても、刃は気にせず追いかけてくるだろう。


「ほいっ」


 A子は臆した様子もなく逆に距離を詰めた。

 上体を反らすことで斬撃を紙一重で回避する。


「なんだとっ!?」


「うひひ」


 驚愕する斧使いの表情をニヤニヤと嘲りながら、A子は逆手に持ち替えた包丁を振るった。

 血塗れの刃が斧使いの胸に沈む。

 A子はすぐに包丁を引き抜いて滅多刺しにした。


 白目を剥いた斧使いは、ぐらりと足元から崩れて絶命する。


「あー、次から次へと楽しいなぁ、っと!」


 A子は両手を広げて笑うが、何かを察知してその場から跳び退く。

 数瞬後、彼女のいた場所に雷撃が叩き込まれた。

 着弾した床が黒焦げになって焼け落ちる。


 天井の梁に掴まったA子は、宙ぶらりんになった状態で目を細めた。


「おぉー、そういえば魔法みたいなのがある世界だったね」


 部屋のすみにローブを着た魔術師の女がいた。

 その手には豪華な装飾の施された杖がある。

 どうやら魔術でA子を攻撃したようだ。


「……チッ」


 不意打ちに失敗した魔術師は舌打ちをするも、構わず雷撃を発射する。

 目視では到底反応できないスピードだ。


 しかし、A子は腕の力だけで跳び上がって躱すと、空中で身を捻った。

 澄み切った美しい双眸が、ぎらぎらとした殺意を漲らせている。

 狂気の眼差しは、しっかりと魔術師を捉えていた。


「ほら、お返しだよんっ」


 A子は身体の捻りを利用して包丁を投げる。

 包丁は狙い違わず魔術師の額に刺さった。


「あ……ああっ……」


 呆けた顔で仰向けに倒れる魔術師。

 詠唱途中で暴発した魔術が、別の暴徒を爆散させた。


 A子は音もなく華麗に着地を決める。

 そこへ凄まじい気迫で大剣を持った男が突っ込んできた。


「死ねえええあああぁッ」


 大上段からの振り下ろし。

 天井を切り裂きながら落ちてくる。

 見るからに圧倒的な破壊力を秘めていた。

 これを真正面から防ぐのは、困難を通り越して愚かと言うべきだろう。


 A子は横に転がって斬撃を回避し、すかさず大剣使いに跳びかかる。

 彼女は両手で男の頭部を掴み、左右の親指で両目を潰した。


「ウガガアアアアアアッ!?」


 獣のような悲鳴を上げる大剣使い。

 彼は激痛のままに大剣を滅茶苦茶に振り回す。


 壁が削り飛ばされ、商品棚が両断された。

 長大な刃が天井や床にも粉砕痕を刻み込んでいく。


 一方、早々と斬撃の範囲外に退避していたA子は、装填済みのクロスボウを拾った。

 彼女は慣れない仕草ながらも、照準を大剣使いの頭部に合わせる。


「ばきゅーん」


 次の瞬間、放たれた矢が大剣使いの側頭部に一直線の孔を穿った。

 血と脳漿が混ざったモノを撒き散らしながら、大剣使いは力尽きて死ぬ。


 クロスボウを捨てたA子は、楽しげに店内の奥に目を向けた。


 そこには人相の悪いスキンヘッドの男がいる。

 手には無骨な曲刀を持っていた。

 この状況にありながらも、怯えることもなくA子を睨んでいる。

 それなりの胆力を備えているらしい。


 両者は張り詰めた空気の中で視線をぶつける。


(戦いは、そろそろ終わりそうだな……)


 破壊されたバリケードの陰から様子を窺っていたルフトは、そっと店内に忍び込んだ。

 ゾンビゴブリンの一件以降、あまり離れすぎるのも危険だと学んだのである。

 彼は何も言わずにA子の背後に控えた。


 スキンヘッドの男は吠えるように問う。


「てめぇら、何者だッ! 何の用で、俺たちのアジトを……!」


「まあ、正義のヒーローってやつだねー。悪いお兄さんたちをぶっ殺しに来たわけさ」


 A子は相手の威嚇をよそに飄々と答える。

 ついでに近くに落ちていた斧を掴み上げた。

 最後の凶器を決めたようだ。


 A子は衝動を隠しもせずにスキンヘッドの男に近付いていく。


「やっぱり楽しいなぁ。これからもっと殺せると思ったら涎が……おぉ?」


 語る途中、A子が素っ頓狂な声を上げる。

 彼女の足元には光り輝く魔法陣。

 光と風は段々と強まっていく。


 召喚魔術の持続時間の限界が訪れたのだ。


「わっ、ちょっとちょっと! ここで終わりってそりゃないでしょっ」


 A子は途端にあたふたと焦る。

 しかし、魔法陣のせいで身動きが満足に取れないらしく、その場で喚くしかできない。

 いくら彼女でも召喚魔術の効力には逆らえないのだ。


 間もなく魔法陣は、A子を元の世界へ送還して消えてしまう。


「……え?」


 状況を受け入れられずに呆然とするルフト。

 半壊した死体だらけの室内に、彼とスキンヘッドの男のみが残された。

総合評価200pt突破しました!

いつもありがとうございます。

今後ともよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ