第二十三話 情報取得
無人の家屋の地下倉庫。
そこに男は拘束されていた。
「――っ! ――――っ!?」
くぐもった悲鳴。
口に詰められた布のせいで発声を妨げられていた。
男は椅子に座った状態で手足を縛られ、まともに動くことができない。
そんな彼の目の前のいるのは、ルフトとA子だった。
A子はハサミで男の手を撫でながら、歌うように語りかける。
「早く喋っちゃった方がいいよー。物が掴めなくなっちゃうのは嫌でしょ?」
「――――ッ!! ――――、――――!!」
「えー? なんて言ってるのか分かんないや。はい、ジョッキンジョッキン」
地下倉庫に悲鳴が響き渡る。
ルフトは青い顔で目を逸らして、ひたすら耐え忍んでいた。
彼は内心で嘆く。
(まったく、どうしてこんなことに……)
町の現状を知る人間から情報が得たい。
そう思ったのは本心である。
だからこそ咄嗟にA子の殺人を止めてまで提案したのだが、まさか拷問紛いの行為が始まるとは予想外であった。
A子曰く「これはこれで好き」とのことだ。
そのまま情報を吐かせる場所を見つけて現在に至る。
(あぁ、僕のせいで、この人は楽に死ねないのか……)
ルフトはちらりと拷問を受ける男を見る。
ちょうどA子の持つハサミによって人体を損壊させられている最中だった。
急速に込み上げる吐き気。
直視するものではない。
慣れたと思ったがまだ駄目らしい、とルフトは口元を押さえる。
そこで楽し気なA子が声をかけてきた。
「ルフトくーん。この人が何か話したいっぽいからメモの準備よろしくー」
「は、はい……分かりました……」
A子も本来の目的は忘れていなかったらしい。
それでも趣味と実益が半々といった具合だろう。
すっかり気持ちの萎えたルフトは、むせ返る血の臭いに耐えながら男の言葉を記録していった。




