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異世界・オブ・ザ・デッド ~才能ゼロの魔術師だけど世界を救いたい~  作者: 結城 からく


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第十七話 攻勢

 ルフトたちが講堂に戻ると、生存者たちに驚きを以て迎えられた。

 死んだものと思われていたらしい。


 見れば探索班の生き残りが二人ほどいた。

 食堂で獣人族のゾンビに襲われた際、真っ先に講堂へ逃げ帰ったのだそうだ。


 薄情な行為に思えるが、制御室に行けばラミルに殺されていただろう。

 自分たち以外にも生還した者がいて良かった、とルフトは安堵する。


 一方、生存者たちの視線は稲荷に集まっていた。

 ぼろぼろの衣服に狐面を着けた彼が気になるらしい。

 額に当たる部分に穴も開いているのだから当然だろう。


 当の本人は、折れた鉈を片手に棒立ちしている。

 時折、生存者を観察しているのは、まだ殺し足りないためか。

 ラミルとの戦いの余韻が残っているのかもしれない。

 隣にいるルフトには、稲荷がウズウズしているのが感じられた。


「……ここでは暴れないでくださいね」


 ルフトが注意すると、稲荷は自信満々に頷く。


「分かってるよー。さすがにそれくらいの分別は付くさ」


 答えながらも鉈を回す稲荷。

 漏れ出る衝動が他の生存者を怖がらせる。

 さすがに慣れつつあるルフトでも、身を震わせるほどの気配だった。


(分別が付いていないから心配なんだけどなぁ……)


 抱いた本音は胸の内に隠しておく。

 ルフトだって命が大切なのだ。




 帰還後、落ち着いたところでルフトは学園長に事の顛末を説明した。

 各地で入手した物資及び鍵の魔道具も渡す。


 鍵の魔道具の見た目は、表面に術式が刻み込まれた金属製の棒だ。

 使用法を知る者がこれに魔力を流すと、学園の防御機構を自由に操作できるのである。


 鍵を受け取った学園長は、穏やかな笑みでルフトに告げる。


「よくぞやってくれた。ラミル・ヴェルトート先生の件に関しては残念だが、彼なりに尽力した結果なのだろう。辛い役目を任せてしまって申し訳ない」


「いえ。僕はほとんど何もできなかったので……稲荷さんの活躍のおかげです」


 自嘲気味に謙遜するルフト。

 そんな彼に、学園長はしっかりと目を見て告げる。


「此度の成果は、君の召喚魔術が招いたものだ。これからも同様に、良くも悪くも君が要因となる。それをよく肝に銘じておくように」


「は、はい! ありがとうございます」


 ルフトは深く頭を下げて学園長に感謝する。




 その日は、心身の疲労もあって早々とルフトは休むこととなった。


 稲荷も魔術の効力が切れてあっさりと元の世界へと帰る。

 別れ際に「いつでも待ってるよ」と期待の眼差しと共に手を振っていたのは、実に彼らしいだろう。

 狐面の妖怪は、こちらの世界での殺戮をまだ望んでいるようだ。


 ルフトが眠る間、講堂の生存者たちは食糧で腹を満たし、杖や魔道具で武装する。

 いずれもルフトが持って帰ってきたものだ。

 既に彼を落ちこぼれと評する空気は無くなりつつあった。

 本人の知らぬところで召喚魔術師としての地位を確立していく。


 そして翌朝。

 講堂の生存者たちは学園内のゾンビの掃討に乗り出した。


 数グループに分かれ、無理をしない範囲で確実に仕留めていく。

 素早い動きの獣人族のゾンビも、防御魔術を駆使すれば倒せない相手ではなかった。


 その中でも目まぐるしい貢献を見せたのは、やはりルフトだ。

 彼は運よく稲荷の再召喚を果たし、ゾンビの殺戮に大きな一手を打った。


 稲荷は破竹の勢いでゾンビを蹴散らしていった。

 召喚されるまでに服装も鉈も新調しており、無双具合にも磨きがかかっている。


 ルフト自身もただ同行するだけではなく、あちこちに籠城していた生存者を救出するという形でサポートした。

 講堂以外の場所でも、密かに生き延びていた者はいたのである。

 戦力の増した生存者グループは、さらなる勢いで安全地帯を確保していく。


 そうしてついには丸三日をかけて学園内のゾンビの殲滅に成功する。

 生存者たちは、束の間の安息を手にしたのであった。

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