恋探し
俺は昔から何でもできるような人間、いわゆる、天才だった。
その上、眉目秀麗、友達付き合いも運動神経もわるくないときた。
そんな俺は当たり前のように周りからは期待の目だらけ正直うんざりしていた。
そんなある高校一年の冬、俺はあいつと出会った。
「おーい、遼カラオケでも行こうぜ~」
「お! いいね行こうぜー遼」
友達の二人がそんな会話をしている中、俺はクラスの端で学級日誌を書いている、上原 祐を眺めていた。
いつも一人で学級の仕事やってんな、なんであそこまでめんどいことが好きなんかね。
俺はそういう目で、祐のことを最初は眺めていた。
「わるい、今日はあいつと用事あるんだわ、ごめんな」
別に約束なんかはしていなかったが、自分からめんどくさいことに関わるあいつが少し興味深かった。
「ん? 上原とか? そうか、わかったまた今度な」
「おう」
そう言って、二人は帰っていった。よし、まずはあいつとしゃべってみるか。そう思い上原の元に向かう。
「おい、上原仕事あるんだろ? 手伝ってやるよ」
「清水か、悪いなこれをやってもらえると助かる」
上原は別に断ろうとはせず俺を頼ってきた。なんだ話せないってわけじゃないんだ。
そして、上原がやっていた資料をホッチキスで止めるという作業を俺も手伝った。
「なぁ、上原なんで必要以上に人と関わらないのに、人が嫌がりそうなことは率先して受けるんだ?」
素朴な疑問だった、俺は天才と呼ばれてはいたが、面倒そうなことや俺がいやだと思ったことはなるべく避けてきた。
だが、あの上原 祐は秀才と呼ばれていながらも、周りにいやな顔一つせず人のために働いていたのだ。
「別に理由なんてないだろ、人の役に立つことはいいことじゃないか」
そう答える上原の顔には何かわけがあると物語っているような露骨な顔をしていた。
「そういわずに、何でも言ってみるもんだぜ」
「はぁー、小学校の時、将来の夢に人の役に立てる人間になりたいって書いちまったからだよ」
「は?」
「なんだよ」
少し照れているような顔は、いつもの営業スマイルのような作った顔ではなく素からでた顔のような気がした。
「はは、マジで言ってんの」
「冗談なんて言うかよ、俺は嘘が嫌いだからな自分の子供の頃が嘘つきなんて結果にならないように、毎日やっている」
こいつは、今までに見たことないタイプだと思った、俺はこいつなら俺の何でもできる人間ではなく頼れる仲間として見てくれようなそんな予感があった。
それから上原いや、祐とは仲良くなった。
そんなこんなで一年が過ぎ、俺たちは高校最後の年となる。
放課後、何気なく廊下を歩いていた、俺も高校最後の年か、短いようなこの気分いつになっても変わらないな。
そんなこと思いながら歩いていると後ろから肩をたたかれる。
「あの、3年の清水先輩ですよね?」
なんだ、また告白か? ま、天才の上に眉目秀麗な俺には仕方がないことでもあるけど。なんて言う自画自賛の冗談を自分で言ってみる。
振り返ると、少し背は低いが、顔が整ってなんとも可愛らしい女の子が立っていた。
「なにかな?」
「上原先輩に会いたいんですけど? 清水先輩は上原先輩と親友だって言っていましたし」
俺ではなく、祐に用があるようだ。さっきの勘違いが少し恥ずかしい。
「祐ならまだ教室でなんかやってるだろうけど、忙しいからまた後でとかいいそうだな」
「なら、清水先輩に折り入って話があるんですけど、ちょとお茶に付き合ってくれませんか」
「いいけど…」
そう言い俺たちは喫茶店へと入って話をするというっことになった。
そこで、彼女西川 由衣ちゃんに話を聞いたところ、着くの一生懸命さや真面目さに惚れてしまったらしい。ようするに、告白希望である。
「でも、祐女性に興味ないなんてことも言ってたしな~」
「それでも、一回ぶつかってみないと私の思いは晴れません!」
ここまでの決意があって俺に話しかけてきたわけか。あの祐に彼女なんだか面白いことになりそうだな。
ここは一つ協力してやるか。
「そこまでの決意があるんだったら、俺と一緒に祐を落とせるようになろう」
「え? そこまで付き合ってくれるんですか?」
「ああ、もちろん親友のためだ!」
「ありがとうございます、天才なんて呼ばれてるからいけ好かない男なんじゃないかとか思っててすいませんでした」
「最後の一言さえなければ、君はかわいい後輩だった。俺は君のこと嫌いになりそうだ…」
「別に清水先輩に好かれようだなんて思っていません!」
そうかい、くそこうなったら意地で祐に由衣ちゃんのことを好きになってもらって俺のことを尊敬させてやる。天才の称号伊達じゃないぜ。
それから、俺と由衣ちゃんは祐への猛アプローチをを始めた、次第に俺たち3人は休日を一緒に過ごすようななかへとなっていった。
祐はと言うと、相も変わらず真面目ではあったが、約束をされると断れない性格のようで、何度も休日は付き合ってくれたが、こちらの意図に気づくということはなかった。
そしてまた月日は流れ、卒業の日へとなってしまった。
今まで退屈だった日常とは少し違う思いと言うのを見つけられたと思う。
そして、由衣ちゃんは祐に告白するという、祐はあまり関心がないようなので成功の確率は低いだろうとのことだった。
「じゃあ、由衣ちゃん頑張って来いよ! 祐はまっすぐな人間が好きだろうから由衣ちゃんはぴったりだ」
「ありがとうございます、遼先輩、私これで成功したら、私も卒業してついていきます!」
「いや、それは、できないだろ…」
などと冗談を言い合い、由衣ちゃんを見守り送った。
冗談ついでに…と心の中で思った。
「俺、お前のこと好きなんだぞ~…」
その声はとても小さく、風が吹く音にかき消えてしまうくらい儚いものだった。
そしてなんと…
「遼、俺たち付き合うことにした」
ぎこちない声で祐が答える。顔もいつもより赤く見える。
「はいはい、おめでとさん、これからも末永くお幸せに~」
「もうなんですか、その棒読み感情がこもってませんね?」
「だってこうなる事は知っ…」
「ああ、言わないでください」
そういうと、3人で買っておいた卒業記念のケーキを一つ掴み俺の口に封するように頬張る。
ま、この二人が付き合えたことは結果的に良かったけど、俺をこんな思いにさせる女性はもう現れないだろうな。
そんな俺の思いがあるのを知らずに、盛り上がっていた。
こうして、卒業も無事に終え、俺と祐は同じ大学に行くこととなる。
~~~
5年と言う年月が流れる、俺たちは偶然にも一緒のマンションで暮らし、祐はビジネスマン、俺は自分の会社を持ちプロジェクト担当および社長をやっている。やはり天才の俺は違ったようだな。
ちなみに、マンションは俺が最上階、祐たちが3階である。
そして、やつらはなんと、ついに昨年、結婚まで果たしてしまった。ほんとにめでたくはあるがなんか悔しくもある。
そして、今日が結婚一周年らしく、なぜか呼ばれているのである。
「なんで俺まで呼んだんだ? 結婚一周年って二人で祝うものじゃないか?」
「祐さん私両方の納得の上ですし、交際記念も3人で祝ったじゃないですか卒業記念と混ぜて」
「で、祐は?」
「少し仕事が長引いてるらしいです、今日くらいと思いましたがなんせあの性格ですからね」
久しぶりに見る由衣ちゃんはなんか大人びていて可愛いから綺麗と言う表現に変わったそんなイメージだった。
これは、祐が帰ってくる前に例の話をつけないとな。
「由衣ちゃん、少しベランダで話していいかな」
「いいですよ」
ベランダの風は妙に気持ちよく俺の緊張を少しなからず癒してくれた。
そして気持ちをリセットし話した。
「由衣ちゃん、俺は君が好きだ」
そう、あれからと言うもの由衣ちゃんのことは忘れられるそんなことを軽く思っていたが、そんな日はやって来ず後悔のような残存した感覚となっている。
これを消すためには由衣ちゃんに合うのが一番だと思っている時にこの話がきてチャンスだと思った。
「私も好きですよ…遼さんも祐さんも!」
「祐さんのほうが上ですけどね」
照れながら祐の方が上だといわれ、何か諦めのようなものが今になって表れた。あわよくばなんて思っていたのがおこがましいほどにだ。
「はは、俺も好きって言ってもらえたのはなかなか、嬉しかったかな」
「あくまで、祐さんが上ですけどね」
「その一言がないと、なお嬉しかったんだけど…」
「この一言は欠かせませよ」
二人の仲と言うのは昔からあまり変わっていないようで少し安心した。
「先に中は行っといて、俺ちょと電話あるから」
「りょうかいです」
そして、携帯を取り出し祐へと電話する。
少しの着信音のあとに祐につながったことが確認する。
「お、祐か先に謝っておく、ごめん!」
「ん? なんのことだ?」
「それより、いつになったら帰れそうだ?」
「今帰ってきている中だ、ケーキくらい買ってきてやるそっちは頼んだぞ」
そういえば、あの卒業式も何個もケーキを祐が買ってたっけな。楽しそうな表情は声音でわかった。祐はなんだかんだ言ってこういうことが好きだった。今回も自分から提案したんかな? なんて恥ずかしい男だ。
「祐、由衣ちゃんとの出会いに感謝しろよ」
「由衣との出会いは今から祝うだろ、あとお前との出会いにも」
「え? 俺?」
「ああ、遼お前と合ってなかったら俺は他人に尽くす人生で終わっていたかもしれないそれをあの時手伝いをしてくれたことで大きく変わったと思う電話越しだがありがとう」
興味本位で近づいただけだったのがいつの間にか、でかくありがたい友情になっていたというわけですか…
あんまり楽しと素直に感じないタイプだと思っていたけど体が熱くなり目元が潤んでくる。
「また、あとで」
「おう!」
恋だのは前まで馬鹿にしていたけど、気づかないうちにまた心を探そうとするのかもな。
これからも、この3人でいれるなんて少し傲慢だろうか、いやそんなことはないはずだ。