無垢
どうして私はここに居るのだろう。どうしてここから出られないのだろう。いつから私はここに居るのだろう。
少女は呼ぶことのできる名前など、一つも持ち合わせていないが「誰かここから出して」と呟いてみる。無駄なことだ。無駄なことをしている自分に笑えてくる。だが、それが本当に笑えているのかわからない。
そうして少女は白くて広い空間に一人で寝転がっていた。
ベッドに横たわって目を開き、白く輝く天井を見つめていた。
瞳の奥に痛みを感じるほど真っ白い清潔な光。この空間と同じような光の色。身体を起こしベッドから降りる。足の裏にいやな感覚を覚えた。身体の中に鋭い物が入りこんでくる感覚。
なにやら、眠る前に遊んでいた玩具を踏んでしまったようだ。
――これが痛覚。不快。
不快という言葉と痛覚というものがどういうものであるかを学んでいた少女は、すぐさまその感覚を消した。否――忘れた――。
少女は自身から流れ出した赤黒い液体を指ですくった。
――これが血液。綺麗。
その指をしゃぶってみる。そして一心不乱に、何かに憑かれたかのように、すくってはしゃぶり、すくってはしゃぶり。
そんなことをしていると、一人の男がやってきた。
「おや?怪我をしているじゃないか!」
少女の怪我の状態を見て、彼は足早にそこから立ち去って行った。そしてすぐに戻ってくると、治療を施した。
ちまちまと進めていきますので、宜しくお願いします。