ようこそ!暗黒女騎士団養成所へ!!
アミーラが連れて来られたのは、砕石場跡のような場所であった。
その中心部には木造平屋建ての簡素な造りの小屋が建てられている。
その建物は、まぁアミーラが普段過ごしている帝都郊外にあるカメリア村に屋敷で過ごす事が多い屋敷より若干小さい程度だ。
ついでに言うとアミーラは魔法学科を始めとする『学校』なるものに一度も通った事がない。学校に行くより家庭教師を雇って自分の屋敷に来てもらった方がよほど効率よく勉強ができるからだ。
帝都の街中で無意味に攻撃魔法を炸裂され、一般市民を無差別に殺傷する魔法学科生を見て幼少期からアミーラは兼ねがね痛感していた。
自分は、ああいう馬鹿な大人にはならないと。
だから彼女は魔法学科には通わない。家庭教師でよいのだと。
「よく来たな黄金のヒヨッコ共!歓迎してやる!!」
やたら偉そうな態度でアミーラ達を出迎えたのは。
痴女だった。
手甲と脚甲はいいとして。
その下着以下の鎧はなんだ。
おっぱいが下半分みえてんぞへそでてんぞ冬になったら寒いぞ風邪ひくぞ。
「私は魔王マイルズ様にお仕える暗黒騎士団オルタナティヴナイツの団長リトリアだ」
痴女はそう名乗った。
「貴様らにはいくつかの道が用意されている。一つはブレインイーターのような人間を食う種類の魔物の餌になる道。もう一つはゴブリンやオークの嫁になる道」
両手を後ろにしてアミーラ達の周囲を歩きながらリトリアは説明を始めた。
「そして、最後の一つは魔王マイルズ様にお仕える我ら暗黒騎士団の一員として人間共との戦いに参加する道だ」
「のうお主その恰好恥ずかしくはないのか?」
「素晴らしい質問だな!貴様、名前はなんという?」
はっきり言って、この質問をしたのはアミーラにとって失策であった。結果として暗黒騎士団長リトリアに目をつけられることになる。
「この鎧は魔王マイルズ様が異世界からもたらした技術によって造られたものなのだ」
「異世界からもたらした技術?」
「魔王マイルズが異世界からもたらした技術?」
「具体的に説明するとだな。この鎧は『ハイレグ』というものらしい。見た目通り動きやすい構造で戦場での回避動作を妨げない」
「しかしそのような太ももを剥き出しにした姿では逆に防御力が下がってしまうのではないのか?」
「やはりそう思うのだな。だがそれがこのハイレグの狙いどころなのだ。これは脚を長く見せることによって逆にそこに攻撃を引き付け、致命傷となりやすい胴体部分への攻撃を避ける効果があるのだ。
さらにしっかりと脚甲をつけているので実際に脚を攻撃される事は少ない」
「なるほど。では胴体部分は?」
「ハイレグは肩に当たる部分はない。だからそこに必要に応じて肩当てをつける。胴体部分も同様だ。で、今はその必要な時か否か?答えてみろアミーラ」
アミーラは少し考え込んだ末。
「たぶん。いらないのではないのか?」
「よろしい。今この養成所にはお前達用のハイレグアーマーはないが、子供用ハイレグアーマー第一号が
出来上がったらアミーラ。まず最初にお前に装備してもらおう!!」
木箱を持った白衣を着た女性が三人。やってきた。そのハイレグアーマーとやらが入っているのだろうか。蓋が開けられる。中には入っていたのは。
「普通の服?」
アミーラは服を手に取って見定めた。ごく普通の服のようだ。長袖の服と、長いズボン。
それに革靴。
「自分の丈にあったものがあるか確認しろ。各自同じサイズの物を五着。そして靴を二足づつ受け取るように。さらに下着も支給する」
「なんで?」
「それと今着ている自分の服は脱いで箱に詰めろ。お前達の国に送り返すからな」
「いやだからなんでそのような事を」
「知りたいか?」
「しりたいかね?」
「では教えよう!」
木箱を持ってきた三人組がなぜかポーズを取った。
「キサラギ!」
「クローム!」
「ムラクモ!」
『チームプロジェクトファンタズマ!オルタナティブナイツを支える技術開発集団とは我らのことよっ!!!』
アミーラだけでなく、その場にいた13人の少女全員が。
いや。暗黒騎士団長のリトリアも含めて思っていた。
こいつらは変態であると。
「まずはその革靴の底を見るがよいっ!」
「革靴の底?」
アミーラ達は革靴の底を見た。波のような溝が掘られている。
「なんじゃこの溝は?」
「それこそ我らの技術革新!」
「靴底に溝を作ることにより、摩擦力を増大。段差や斜面などでの滑りにくくなり、転倒の怪我がしにくくなったのだ!!」
「怪我をした?はい回復魔法」
「なんと愚かな!それは魔力の浪費!」
「回復魔法を使用!わずかなスキをついて敵が攻撃してくるはず!」
「それらを防ぐ驚異の発明!!」
「ただの靴ではないか」
「次!上着とズボン」
チームファンタズマは話を聞いていない。
「スカートは足がスースーするので寒い!」
「よって女子でもズボン!防寒!!あったか!!」
「それだけ・・・」
「ではない!!」
「服の繊維の中に魔王領に済む特殊な蚕の糸を織り込んである!」
「エルフ族は目がいい!暗闇でもぼんやりと人の影が見えたり、あるいは魔力を探知して人間に正確な射撃を加えるという!!」
「だが、この服を着込めば闇の中でエルフ族の目を誤魔化すことが可能となる!!」
「あ、魔法使ったり松明持ったりするなよ?明りでバレるからな」
「それって凄いのか?」
「我らは技術者!」
「暗闇の中にエルフスナイパーを配置し、」
「100メートル先に松明を持った捕虜の冒険者を設置し、」
「『五分間じっとしてたら人間の国に無事に帰してあげるよ』と指示する」
「いやそれ冒険者はエルフに狙撃されるだろ?絶対死ぬだろ?」
「我らは技術者だっ!!」
「たとえば50メートルの高さから10キロの鉄球を人間の頭に直撃させる」
「いやそれも死ぬから」
「黙れ!死なないかもしれないだろ!」
「そうだ!『僕は魔法学科の優等生なんですよ(ドヤァ)
遺伝子操作で産まれた超人兵士なんですよ(ドヤア)
頭蓋骨が吹き飛んで脳味噌がグチャグチャになっても瞬間再生魔法で復活するんですよ(ドヤア)』
と、言いながら生き返るかもしれないじゃないかっ!!」
「だから本当に死ぬかどうか実験するのだっ!!!」
黙って、リトリアはチームファンタズマの連中の首を掴む。そしてチームファンタズマの三人を片手で放り投げる。アミーラが運ばれてきたこの訓練施設に繋がる通校門を越えて、遥か彼方に投げ捨てられた。
その距離、少なくとも軽く1キロはある。
なかなかの怪力だ。実に頼もしい。
萌えないゴミを始末した後、リトリアは木箱に一旦蓋をした。
「建物内に更衣室がある。少し、静かなところで着替えをしろ」
「はい」
全員。意見に従うことにした。




