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偶然の一致

作者: 太巻 太郎

ある絵に書いたような幸せな夫婦がいた。

2人は、本当に仲が良かった。

そして、驚くほどの共通点があった。


 最初の出会いは偶然だった。

ランチを食べにいったお店が混んでいて

相席で隣になった。


普通ならそれで終わり、ても2人は

違った。



偶然同じ料理しかもセットのサラダ

スープそしてメインのソースも全く

同じそして同時に2人に運ばれた。


そのお店は、料理とセットを

合わせると100種類以上の

メニューになる。それが売りの

店だった。


まさに偶然の一致


でも、これくらいならよくある話


ここから怒涛の偶然の一致が始まる。



なんと帰りの電車も偶然同じだった。


さすがにお互い気がついて

軽く会釈した。


そして、降りる駅も同じ

帰り道も同じどころか


同じマンションの隣同士だった。


男性の方が


「お隣だったんですね?」


と笑顔で言うと


女性の方も笑顔で


「最近、引っ越して来たんです」


と言いながら、2人とも名残惜しい

感じて笑顔を見せ合っていた。


そして、男性の方が


「僕の名前は、のじま つばさと言います」


女性は、えっ!とした顔をして


男性の部屋のポストに書いてある名前を見た。


「私も のじま つばさって言います!」


ふたりが同時に互いの部屋のポストを見て

声を揃えて


「え?同じ名前で漢字も同じ!」


声まで偶然の一致で合ってしまう。


そうふたりの名前は、野嶋 翼


読み方も漢字も同じだった。


まさに偶然の一致


そしてふたりは同時に恋に落ちた。


でも、そこからさらなる偶然の一致が

明らかになる。



女性の方が

「野嶋さん何歳なの?」


ふたりとも同じ名前なので

女性が男性の方を野嶋さん

男性が女性の方を翼さんと自然に

呼んでいた。


野嶋が答えた

「俺、25歳だけど」


「え?同じ年じゃない」

翼が嬉しそうに答えた。


そして

「野嶋さん誕生日は?」


「あっ10月18日だけど」


と言ったとたん

翼は目を丸くして言った・


「えー誕生日も同じじゃない」


「ほんと?」

でも野嶋が少し節目がちに語りだした。



「でも、実は、本当の誕生日はわからないんだ

施設の玄関に置き去りにされてたんだよ。

俺、生まれたての赤ちゃんだったけど

本当の親はわからないんだ。ずっと施設で

育ったんだよ。だから、その置き去りにされた日が

誕生日ってわけ。ちょっと引いた?」


翼はそれを聞いて益々目が丸くなった。


「私も同じなの。施設で育ったわ。私も

生まれたての赤ちゃんで

10月18日に置き去りにされてたの」



「えー偶然の一致が多すぎる~」


ふたりはまた偶然の一致で声が合った。



やがてふたりは結婚した。


プロポーズもふたり同時に言い出すし

結婚式の段取りも新婚旅行のプランも

偶然の一致で全く同じ考え


スムーズにことが運ぶこと

矢の如しだ。



結婚してからも偶然の一致は続いた。


野崎が食べたいと思うものが

毎日食卓に出て来た。


見たいテレビも同じ


風邪もふたり同時にひいて

同時になおる。


野崎が会社でカッターナイフで

指を切って帰ると、翼も包丁で指を切っていた。


全く、偶然の一致が日常なのだ。


ふたりに子どもは無かったが

幸せにいや信じられないくらい幸せに

暮らしていた。


でもその幸せも終わりの時が来た。


ふたり同時に重い病気になり

ふたり同じ期間の余名宣告を

受けた。


病院の粋な計らいで

あまりにも仲の良いふたりの

ために、個室でふたり並べて

ベットを置いてくれた。


ふたりはとなり同士のベットで

手をつなぎながら、死がおとずれるのを

待つ日々だった。


ある日翼が言った。


「私たち死ぬのも同時だよね?」


「偶然の一致ばかりだからか?


野嶋が答えると


翼の瞳には涙がにじんでいた。


「違う。。。あたなより先に死ぬのも

後に死ぬのも悲しい。。。」


「あなたが先に死んだら私はどう生きていいのか

わからない」

「私が先に死んだら私、絶対後悔するとおもう」


翼の涙は大粒の涙に変わっていた。



「心配しないで大丈夫」


野崎は全身に朝日を浴びて

すべてを包みこむ優しさをおびていた。


「僕たちは死ぬときも同時だよ」


翼が聞き返す

「偶然の一致で同時に死ぬの?」


野崎が微笑みながらその問に答えた。

「ちがうこれは必然だよ」

「だから大丈夫」


翼の涙は朝日を受けてキラキラ輝きながら

まるでほうき星のようにきれいに流れていた。


その瞬間

ふたりの心拍数が同時にゼロになった。




ふたりは手をつなぎながら安らかな顔で

同時に永眠した。。。。






ふたりは天国の入り口に立っていた。


入り口には男性と女性がふたりを

待ちかまえていた。



男性が頭をさげながらこう言った。


「お父さんもお母さんもあの時は

貧しかった。ふたりを育てること

は無理だった。」

「ひとつの施設にふたり置き去りに

したんじゃ負担が大きいと思って

双子のお前たちを別々の施設の玄関に

置いたんだ。」


「すまんかった。置き去りにしたことも

双子のお前たちが結婚して子どもが

出来なかったのも、わしと母さんの

責任じゃ申し訳なかった」



そのとき、ふたりは同時に声をあげた


「え?双子だったんだ!」


亡くなった後も偶然の一致は続くようだ。


もはや必然かも知れないが。。。。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 独特の世界感があって良かったです! 私もこちらでお話を書かせて頂いていますが、なかなか独自の世界観を演出出来なくて苦労しています… これからも執筆活動をぜひ頑張ってください!
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