ストーブと猫様の危険な関係
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私、鮎川のご主人様の御毛の御色は“純白”だ。
子猫の時は頭に三~四本の黒い毛が生えてたのだが、成長と共にいつの間にか無くなった。
「やっと、本物の白猫様になった」と、思った頃、その悲劇は起こった。
我が家では長年ファンヒーターで暖をとっていたのだが、先の震災の際、電気が数日間来なかったトラウマがあり、ウチの第三下僕のぬらりひょん(妖怪⚫ハゲ)が、ずっと昔ながらの電気を必要としない“反射式ストーブ”や“ダルマストーブ”を欲しがっていた。
しかし、震災前はファンヒーターよりも安価で販売されていたその手のストーブも、需要が増えた為か、元々あまり生産されていなかった為か、べらぼうな値段を付けられて店頭に並んでいた為、妖怪ぬらりひょんの薄給では手が出なかったらしい。
しかし、近所のホームセンターで安売りでもしてたのか、ぬらりひょんに臨時収入でも在ったのか、ある日突然、我が家に“反射式ストーブ”がやって来た。
実は、昔飼っていた猫が反射式ストーブの上に飛び乗って火傷をしてしまった事が在ったので、私はあまりこの手のストーブは歓迎出来ない。
暖房効率も悪いし、電気は食わないがその分灯油の消費が半端無い。別に反射式ストーブの製造会社に喧嘩を売っている訳では無いので誤解なきように。
「Q太郎だって、バカじゃないんだ。こんな熱い所へ乗ったりしないよ」そんな事を云いながら反射式ストーブを嬉々として点火する妖怪ぬらりひょん。
そうか、私の昔のご主人様はバカだったのか、へー。
やはり、ファンヒーターと違い、点火して直ぐに部屋が暖まる事もなく「やっぱりコレはいざと云う時の為に仕舞って置いて、ファンヒーターを使おうよ」と炬燵で丸くなっていた私がふとストーブに目をやると、ストーブの直ぐ側にQ太郎がいた。
ファンヒーターには、音が厭なのか温風が厭なのか、決して近づかなかったのに。
反射式ストーブには焼けそうな程ぴったりくっついている。
「わー! Q太郎! 焼けちゃうよ! 焼き猫になっちゃうよ」
「んー?」
“焼き鳥”なら大好物だが“焼き猫”だと猟奇的なイメージしか沸かない。
抱いて引き離すと、Q太郎の毛は発火しないのが不思議なくらい熱い。
「あちちち! あちっ!」
「何をするのだ下僕、折角余が気持ちよう暖まっておると云うのに」
引き離しても、直ぐにストーブの至近距離に戻り、恍惚の表情になるQ太郎。
「そなたもたまには気が利くのう、第三下僕ハゲよ。あとで褒美をとらそう」
ちなみにQ太郎の云う“褒美”とは“死んだネズミ”もしくは“死んだスズメ”である。貰ってもちっとも嬉しくない。むしろ下僕にとっては厭がらせである。
取りあえず、発火しないギリギリの線までしか近付かない様だし、上にに飛び乗ったりもしないし、ファンヒーターと違い、火事が心配なのでマメに消したりしていたので、Q太郎の好きにさせておいた。
そうして数日後、私はQ太郎の異変に気付いた。
いつものようにQ太郎をモフモフしていると毛の色がおかしい。
汚れかな?と思いシャンプータオルで拭いてもなかなか落ちないし、普通、外で付いた汚れならば灰色や茶色だ。しかし。
Q太郎の体のあちこちの毛が“黄色”に変色しているのだ。
もはや白猫様ではない。“黄猫様”だ。
「うあああ~! Q太郎の、毛が、毛がああ!」
そうだ、余りにも反射式ストーブにぴったりくっついていた為に熱で毛が黄色く変色してしまったのだ。
以来私は人にQ太郎の事を話す時、「ウチの猫は白猫です。でもちょっと黄ばんでいます」と、余計な一言を付け加えるようになった。
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猫様の毛の黄ばみを取る方法をご存知の方は作者まで御一報下さいますようお願い申し上げます。