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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
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インフルエンザと発情期


 昔観た映画のワンシーン。

 老婦人が仕事か何かから戻って来ると其処はいわゆる猫屋敷で、数十匹の猫が空腹を訴え老婦人に餌をねだるが、彼女は貧しいらしく猫の食事を用意することが出来ない。

「ごめんね、今日はお前達にやるものがないの……」そう、すまなそうに云う老婦人、しかし、猫は空腹で気が立ち、彼女の手を引っ掻く。

 引っ掻かれた手を押さえ、それでも申し訳なさそうにしている老婦人を見て、私は子供心に“猫とはなんという我が儘な生き物なのだろう”と、戦慄を覚えた。

 何と云うタイトルの映画か判らないのだが、そのシーンだけは頭に今も残っている。


 しかし、こんなシーンを観ても猫ギライにはならないのが不思議だ。私は生粋の猫好きなのだろう。


 で、私は今病に伏している。

 インフルエンザだ。

 これを執筆している今は薬のお陰で熱も下がり、悪寒などもないが、前日の夜は寒気と悪寒でなすすべもなかった。


 病状が悪化したのは自分もQ太郎も食事が終わってからだったので、空腹で気が立ったQ太郎に引っ掛かれる事は無かった。

 まあ、Q太郎は空腹でも引っ掻きなどはせず、ふてくされるだけなのだが。


 しかし、私かやっとの思いで床に着くとQ太郎が外へ出たがり鳴く。

 実は近所の飼い猫のナナ嬢が発情期なのだ。

 そのナナ嬢のフェロモンに当てられてQ太郎もシロスケも、そしてここら辺のオス猫全員か落ち着かない様子なのは知っていた。


 ナナ嬢はたまにウチに遊びに来るが、Q太郎目的と云うよりハッキリ云ってウチの炬燵が目的なのだ。

 ナナ嬢は飼い猫と云っても基本的に外で飼われていて、物置小屋の隅を寝床にしているので、冬は、家に入れて貰えてしかも炬燵に入っても怒られない我が家に入り浸るのが常だ。


 で、寝る前に炬燵からナナ嬢を引きずり出し、家に帰したのだが、Q太郎にしてみればさっきまで炬燵に入っていたナナ嬢が居ないので少しパニックになったらしい。


 Q太郎ももう大人だ、発情期のメス猫が居れば落ち着かないだろうし、なんかちょっと期待してしまう気持ちは解る。

 しかし、Q太郎がナナ嬢に言い寄ってもフラレるのがオチだ。それに私は寒気と悪寒で勝手口を開けてやる気力も無い。


「下僕、ナナのところに行くから戸を開けろー!」

「ごめん、無理ゲホッ」

「あああ、他のオス猫に先を越されてしまうー!」

「どうせ……ゴホッ、ナナはQ太郎の事なんかゲホゲホ眼中にないんだから諦めなゲホッ」

「なんだと? 下僕の分際で!」

「ゲホッゲホゲホゲホゲホグェッげほ」


 それからQ太郎は一晩中鳴きまくっていた。それと熱とで私も一晩中変な夢を見ていた。寝た気がしない。


 引っ掛かれるか噛みつかれた方が数万倍マシだったかもしれない。

 てか、何で私のインフルエンザとナナ嬢の発情期が一緒に来るのやら(泣)






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