熊になった猫様(本当はスリム)
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すっかり更新を滞らせている間に季節はすっかり冬である。
去年の初夏にやって来て、頼り無げな黒いヒヨコみたいだった熊吾郎ももう推定月齢が九~十ヶ月となった。
小さい頃は、うっかり熊吾郎を踏んだりしないように気を付けながら生活していたが、今となっては、うっかり熊吾郎に踏まれ無いように生活するようになった。
大食漢と云う訳ではなく、寧ろ食べる事にあまり興味が無く、遊ぶ事に命をかけているヤンチャ坊主なのに、何故か体つきは丸っこい。
妙齢の御婦人が、「私、空気を吸っただけで肥っちゃうのよ」等と云っているのをよく聞くが、それと同じ事なのだろうか?
それとも、近所に猫好きな御仁が居て、遊びに行った熊吾郎に刺身盛合せでもふるまっているのだろうか?
単に、私が仕える猫様はことごとく肥るという事なのだろうか?
さて、そんなこんなですっかり私の目論見通り“熊吾郎”と云う名前が板についてしまった熊吾郎である。
尻尾が短ければ、月ノ輪熊の子熊に間違われそうなくらい熊っぽい。
口の悪い第三下僕には“デブ猫”と罵られているが、実は驚愕の真実を知ることとなる。
熊吾郎の体は肥ってはいない。
かと云ってガリガリに痩せている訳でも無い。
健康的な若猫の理想体型なのである。
なのに何故丸っこいのか?
それは、微妙に毛が長いのだ。
勿論、短毛か長毛で云えば短毛である。
しかし、彼の叔父にあたる故Q太郎が尻尾だけセミロングだったように、全体的に微妙に長い被毛を纏っているのである。
何より熊吾郎の祖父はあのシロスケだし、母はシロスケとナナ嬢の間に生まれたシロッコちゃん(純白のセミロングの美猫)なので被毛が中途半端な長さなのも別段不思議ではない。
そんな訳でいっその事、短い短毛(と云うのも変だが)か、セミロングだったらそんなに肥っているようには見えなかったのに……と、思う訳である。
余談だが、私もよく人に「また肥りましたね」等と云われるので、熊吾郎の気持ちは良く判る。
「あれ? 鮎川さん、また肥ったんじゃないですか?」
「いえ、冬だから厚着なんでそう見えるだけですよ」
そう、猫様も人間も毛や着るもので印象が変わってしまう。と云う話である。
とか云いながら体重計に乗るのが怖いと思っている私であった。




