黒猫様専用
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夏真っ盛りのある日、私はアイスコーヒーを飲みながら寛いでいた。
すると、熊吾郎がじっと私のコーヒーのグラスを見詰め、カラカラと音のするのを不思議そうに見ている。
暫く観察していると、熊吾郎は手を恐る恐るグラスの中に入れようとしたので、慌てて小さなコーヒーカップに水と氷を入れたのを持って来たら夢中になって遊んでいた。
このカップは熊吾郎がもっと小さい頃、スキムミルクを溶くのに使ったものである。
手で氷を掬おうとしてカラカラ音がするので楽しいらしい。
見事に氷を掬い上げ、カップの中から出したらゲームクリア。
喉が乾いたらカップの中の水を飲めばいい。
夏の間はこの遊びが熊吾郎のお気に入りだったのだ。
しかし、ひとつ問題が。
熊吾郎はテーブルの上にあるカップでしか水を飲まなくなった。
他の場所に水飲みを置いているのだが、そこからは飲まず、すっかりシロスケの水飲み場になってしまった。
あまつさえ、定位置にカップが置いていないと不満の声を上げる。
やがて涼しくなった頃、、小さなコーヒーカップでは熊吾郎の顔が入らなくなって来た。
そこで大きめのマグカップを
「これ、くまこのにしてやるよ」と、献上することにした。
なのでテーブルの上には常に水を入れたマグカップが置いてある。
来客時に熊吾郎がテーブルにひらりと乗り、マグカップから水を飲むのを見て客人が驚いていたりして結構楽しい。




