憧れのデカ猫様
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小さくて愛らしい熊吾郎も可愛いが、私、鮎川はデカイ猫様が好きなのである。
熊吾郎はシロスケの血を受け継いでいるので、将来デカイ猫になるのは確定であるが、そのデカイ猫になるまで何ヵ月も待たなければならない。
縦にも横にもデカイ猫様を思う存分モフモフしたり、重たい体を砂袋みたいに「よっこらしょ」と抱っこしたいのである。
なので、撮り溜めていた故Q太郎の写真や動画を見てそのさわり心地や重さを思い出している今日この頃である。
Q太郎を抱き抱え、腱鞘炎になってしまったのも、今となっては懐かしい。
「ああ、デカイ猫様をモフモフしたい」
日毎にその欲求は高まるばかりだ。
もし、今、「デカイ猫様をモフモフさせてやるから百万円払え」と云われたら、何の躊躇もなく百万円を支払うだろう。
……すまん、百万円なんて持っていない(泣)
そのうち他所の家の窓辺に佇むノルウェジアンフォレストキャットに眼が眩み、不法侵入してしまうのではないか?と、気が気では無い。
しかし、冷静に考えてみれば、居るではないか、デカイ猫様が。
縦にデカいロングアンドサブスタンシャルの見事なボディを惜し気もなく横にも巨大化させた猫様が。
「シロスケ!」
私はやおら熊吾郎の食べ残しのフードをパクついているシロスケににじり寄った。
「な、何だ?今食事中だぞ?」と警戒しながらも口はせわしなく仔猫用ドライフード(小粒タイプ)に食らいついているシロスケの体をモフモフした。
「うへへへ、にぃさん、ええ体してまんなあ~(ヨダレ)」
そんな変態鮎川にも怯む事無く食事を続けるシロスケ。否、怯んでは居るのだが、怯みながらもカリカリの入った食器から顔を離そうとしない。何と云う集中力であろう。
調子に乗った私は、今度はシロスケの両脇に手を入れ、抱き上げようとしたが……
「いや~ん」
そうか、厭か。
何だか段々自分が、中年親父の体をヨダレを垂らしてなでくり回している変態に思えて来て(実際その通りなのだが)やるせなくなり、家の中に目をやると、熊吾郎が不思議そうな顔で私とシロスケを見ていた。
……うん。そりゃ不思議だろう(泣)




