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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
黒猫様の下僕日記
53/65

ドS仔猫登場



 いやはや、思えばQ太郎以来仔猫を育てていないので、どうすればいいのかスッカリ困惑している。

 ……考えてみれば、Q太郎の仔猫時代は殆どミケコ(母)とぶっちー(祖母)に任せっぱなしだった。

 すると、ぶっちー以来と云うことになる。


 まず、猫様はトイレと食事をクリア出来たらOKなのだが、生後一ヶ月程の離乳も終わっていないような仔猫である。

 ウェットフードをミルクでのばして与えてみたが一日目は警戒心が強くて中々食べない。

 何とか、鼻先に付けてやったら少しばかり食べたが、置いてやってても自分で食べようとはしなかった。


 が、次の日あたりから警戒心が薄れたのか、少ししか食べてないので腹が減ったのか、スプーンで掬って鼻先に持っていったらスプーンまで食いそうな勢いでガツガツ食べた。


 物が食べられるのなら一安心。“この人間は食べ物を持って来てくれる”と認識してくれさえすればあとは楽勝である。


 更に次の日は自分から食事を催促するようになり、私の肩にまでよじ登って来るようになったのだが……

 ずっと、私の肩やら首を“ニギニギ”しているのである。

 この動作は、母猫の乳の出を良くする為に仔猫がやる動作なのだが、私の肩や首をいくら“ニギニギ”したって乳など出ない。

 それどころか仔猫の針のような爪が延々とちくちくちくちく刺さるので地味に痛い。

 まるで拷問である。

 綿みたいなホワホワの毛が顔に当たる感触は下棒冥利に尽きる。

 しかしそれは痛い“ニギニギ”とセットなのだ。

「痛い、可愛い、痛い、可愛い」 

 そのウチ「痛い」しか感じなくなり、仔猫が肩の上に乗ってくるのが恐怖となった。

「な……何なのだろう? この仕打ちは。一体私が何をしたっていうんだ? この前ウチの会社の物覚えの悪い 新人に嫌味を云った罰か? いや、社長がヅラである事を周りに吹聴した罰か?」

 ……つくづく、人間とは罪深い生き物である。

 そして、そんな懺悔(?)をしている間も私の首をニギニギしている仔猫。痛い、痛い痛い痛い

(泣)

 しかし、自らの罪を悔い改めた私は天啓を受ける事となる。


 ― 爪が痛ければ切ってしまえば良いじゃないの ―


 そうだ! 痛いのはこの、針よりも細い爪の先なのだ。

 ここを切ってしまえばどんなに“ニギニギ”されても痛くはない筈だ。

 しかし、おかし、かかし、

 私は猫の爪を切った事が無い。

 しかもこんな小さい仔猫の爪である。

 もし、切ろうとしたまさにその時、仔猫が動いて爪どころか前足を切り落としてしまったら……と、ガクブル状態である。

 ガクブルしながらも“ニギニギ”は続く。

「もし、嫌がるようなら止めよう」

 そう決心して爪切りを取り出した。

 ふにふにした肉球を軽く押さえて指を開かせ、爪の先に爪切りを当て、狙いを定めて……

 パチッ。

 おお、意外と嫌がらないし、暴れない。

 案ずるより産むが易しとはよく云ったものだ。その調子で前足の爪を切っていった。しかし、親指の爪は切りにくかったのでそのまま。

 

 私の目論見通り、その後、ニギニギされても痛くなくなった。

 それどころか肩でも揉んでもらっているような気持ち良さである。

 そんな気持ち良さにうっとりしていると……


 カプッ!


 なんと云うことだ。

 今度は私の顔を“カミカミ”し始めたではないか。

 顎をカミカミ

 鼻をカミカミ

 頬をカミカミ


 “ニギニギ”の次は“カミカミ”か。

 この仔猫はどうしても私を痛めつけたいらしい(泣)

 


 

  

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