回復……したはずなのに
◇
そんな訳で、一週間程家に引き籠って寝てばかり居たQ太郎だったが、血の混じった目ヤニも出なくなり、体調も良くなったのだろう。私が休みの日に外で日向ぼっこをしたり、更に夜外出出来るようになった。
更に、鱈の煮付けやイワシの刺身や焼いたもの、柔らかい赤イカなども食べていたので、もうすっかり良くなった。と、思っていたのだ。
しかし、日向ぼっこも外出もその一回きりで、あとは寝ている事が多かった。
ずっと家に居たから体力がなくなってしんどいんだろう。と、寝たいだけ寝させてやったが、Q太郎の背中を撫でて愕然とした。
肉が無くなって、背骨が浮き出ていたのである。
食べているのに何故?
クロぶっちゃんと二匹でマグロをねだり、仲良く食べていたじゃないか。
気になって、食べる所を見ていると、Q太郎は“ねだり”はするが食べていないのだ。
マグロの臭いを嗅ぎ、なんだか落胆した様子で顔を上げ、既に自分の分を食べ終わったクロぶっちゃんが
「要らないなら貰うよ」と、ワンパクに食べているのを眺めているだけだった。
最初は、クロぶっちゃんに気を遣っているのかと思ったが、子猫の食事まで盗み食いする程食い意地の張ったQ太郎が、今更そんな事をするはずがない。
マグロに飽きてしまったのかと、色々な種類のウェットフード、高級ドライフードなどを与えたが、そのどれもが、Q太の腹に納まる事は無かった。
いつからこの状態だったのだろう?
回復したのでは無かったのか?
何で私は気がつかなかったのだろう?
私が不安と後悔を感じた時にはもう既に遅く、“その日”がやって来てしまったのだ。
※次話に続く




