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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
33/65

ぷー太郎の命日

愛猫の命日と云う事と、作者の気持ちの整理の為に書いた為、物凄く湿っぽいです。

猫様の悲しい話が苦手な方はこの話は読まずに次の話の更新までお待ち下さい。

次話は楽しい話を書く予定です。




 五月十七日はぷー太郎の命日だ。


 人間でも猫様でも喧嘩などせず仲良く楽しく付き合うのが一番なのだが、そうも行かない事がある。

 猫様の場合は縄張り争いがそうだ。

 縄張り争いに敗れるとどうなるかと云うと、何処かへ立ち去らねばならないらしい。

 生粋の野良猫ならそれでもいいかもしれないが、家猫様がこの争いに敗れると悲惨である。

 立ち去ったはいいが、食べる物も無く、暖かい寝床も探せずにさ迷い歩くのだ。ぷー太郎がそうだった。

 ぷー太郎はシロスケとの戦いに敗れ、ウチに近寄る事が出来なくなった。

 その結果、数日に一度、或いは数週間に一度、シロスケが居ないのを見計らってこっそり帰って来て、数日間の空腹を埋める為にしこたま食い、半日程泥のように熟睡し、そしてシロスケに見付からぬウチに何処かへ行ってしまう。


 一体、何処へ云ってるのだろう? と思っていたが、ある日の仕事帰り、車で国道を走っていると見覚えのあるトラブチの猫がセンターラインの上に倒れているのを見付けた。

 車で走っている感覚では家の近くだが、猫の行動範囲としては家から遠すぎる。

 そんな遠くまで追いやられていたのだ。ぷー太郎は。

 車を降り、近くで見るまで他の猫であるようにと願ったが、紛れもなくぷー太郎であった。たった今轢かれたらしく、体も温かかった。

 国道の半端ない交通量の中、死んだ猫を抱いて自分の車に戻る様を、他のドライバー達が奇異の目で見ているのが感じられる。

 だが物言わぬ亡骸になったとはいえ、ぷー太郎がこのまま車に潰される様を見たくは無かった。

 綺麗なうちに家に連れて帰ってやりたかった。 

 何でこんな交通量の多い時間帯に国道を渡ったのか?

 それは、この時間に帰れば例えシロスケがいても私がシロスケを追い払ってくれる。そう思ったのだろう。


 家に帰り、バスタオルにくるんだぷー太郎を玄関に寝かせると、ぶっちー(ぷー太郎の母)が驚いた顔でぷー太郎と私を交互に見ている。まるで「あんたが殺したの?」と責めているようだった。

 ミケコとQ太郎は

「おにいたん、おかえり、何でねんねしてゆの?」

「おじちゃん、ゴハンあるよ。食べないの?」

と“死”を理解出来ない様子だった。


 私を含めた下僕達は三人ともぷー太郎に「おかえり」と云った。

 もうこれでぷー太郎は腹を空かせてさ迷い歩く事は無い。危ない国道を渡らなくても良い。

 しかし私は“シロスケのせいでぷー太郎は死んだ”と云う感がどうしても拭えなくてなに食わぬ顔でやって来たシロスケに罵声を浴びせ追い払った。


 が、一番悪いのは私だろう。

 まなじ猫好きだから、迷い込んで来た猫を見ると無条件に甘やかす。

 結果、“俺はここ家の猫なんだ”と思ったシロスケに雄の成猫のぷー太郎は追い出された。


 ぷー太郎が死んだ悲しさと、自分の馬鹿さ加減にその後暫く落ち込んでいた。猫に死なれたのはこれで初めててはないのに。

 でも、こんな可哀想な死にかたってないじゃないか。


 ぷー太郎を埋葬するため、庭の隅に穴を掘っていると、ぶっちーが悲しそうに見ている。

 腹を空かせていたぷー太郎の為に、フードも一緒に埋葬した。


 墓標と献花を兼ねて植えたキングサリはその年のぷー太郎の初盆に季節外れの花を咲かせ、その後去年は花が咲かなかったが、今年は一房だけ蕾が出てきた。


 もう、二年になるんだな。

 “猫には九つの魂がある”と云うのが本当なら、今頃何処かで生まれ変わっているのだろうか?

 だとしたら、生まれ変わったぷー太郎が幸せで長生き出来ますように。



 

 挿絵(By みてみん)

※在りし日のぷー太郎



 


 



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