猫様痩身術
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Q太郎がスマートになって来た。
食べる量は変わらないのだが、昼も夜も何処かへ出掛けて、帰ってくると疲労困憊の顔つきをしている。
例えて云うなら、夜勤が終わった後そのまま日勤にも駆り出された建設現場の作業員とか、締め切りが迫って三日間徹夜した漫画家とか、一週間飲まず食わずで山の中をさ迷ったバックパッカーとか、そんな感じである。
疲れるのならば出掛けなければいいのにと思うのだが、マグロを食らい、少しばかりの仮眠をとると、また何処かへ出掛けてしまうのだ。
縄張りの広さが雄猫のステイタスらしいが、こんなに疲れていては縄張り争いの喧嘩にも負けてしまうではないか。
てか、どんだけ領地を広げたいんだQ太郎。
ところで、今迄はQ太郎に首輪を付けていなかった。
猫様に首輪等とおこがましい事は出来ない。とか、そんな思想が有った訳ではなく、Q太郎はしょっちゅう首輪を無くすので、買いに行くのが疲れただけである。
何処かへ引っ掛かると外れる安全首輪を使用していたのだが、しょっちゅう無くすと云う事は、しょっちゅう首輪が引っ掛かると云う事なのだろう。
うっかり普通の首輪を付けたらそのまま帰って来れない可能性もある。
だったら、首輪無しの方がいいかなあ~?
と、思ったりもした。
しかし、やはり首輪は猫様にとって身分証明のようなもので、首輪さえつけていれば「ああ、この猫は飼い猫なんだな」と解って貰える。飼い猫であるがゆえに避けられる災難もあるかもしれない。
更に、連絡先等を明記しておけば何か有った時に親切な猫好きの方が連絡して下さるかもしれない。
猫好きじゃなくても連絡してくれるかもしれない。
「アンタんとこの猫がウチのサンマ食っちゃったんだけど!」とか。
ちなみに、迷子札にはそんな苦情を想定して、第三下僕・ぬらりひょんの携帯番号を書いておいた(笑)
話は元に戻るが、Q太郎がスマートになったのは単に今迄より運動量が増えたからだろうと何となく思っている次第だ。
しこたま食って、寝てばかり居れば猫でも人間でも肥ると云うものだ。
それが、突然、何の目的が有るのか解らないがあちこちを歩き回るようになれば当然運動量も増えるし疲れる。
例えて云うなら今迄ニートだった人が、イキナリ鳶職になってしまったようなものだ。
とは云え、スリムになってカッコ良くなって貰いたい反面、あまり無理をし過ぎて体を壊さないかと心配でもある。
猫様は肥ってぶよんぶよんでも、元気で長生きしてくれるのが一番なのだ。




