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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
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猫様の優雅な食生活の件



 Q太郎はとにかく好き嫌いが多い。

 彼の祖母猫であるキジトラブチの“ぶっちー”が酷い偏食だったので、その血を受け継いだのかと思ったが、彼女は偏食の上に食が細かった。

 その娘、つまりQ太郎の母猫の“ミケコ” は大食漢で、食べ物と名の付くものならおよそ何でも食べた。たまに食べ物じゃないのも食べた。

 

 その二匹の、丁度悪い部分だけ受け継いだのがQ太郎だ。

 つまり、大食漢だが偏食。これは始末におえない。


 まず、キャットフード類は高級なやつしか食べない。

 しかも、その高級なキャットフードを際限なく“お代わり”しやがる。


 これは私の財布も悲鳴を上げた。ある日突然財布がぱっくりと開き「きゃー!」と絶叫したのだ。

 と、云うのは流石に嘘だが。


 薄給の私は途方に暮れた。何故、“好き嫌いは無いが少食”の方に傾いてくれなかったのか。

 しかし、これは遺伝のせいばかりではなく“ぶっちー”や“ミケコ”が居なくなって、寂しかろうと甘やかした私にも責任はある。


 つまり、寂しい分食べる物位は出来る限り良いものを与えようと、ちょっと良い感じのキャットフードを買ってきて与えていた私の馬鹿野郎。


 しかも、Q太郎は自分の食事をしこたま食らった後、我ら下僕の食事まで奪う。なんたる残忍な獣であろうか。


 マグロの刺身など買ってきた日にゃ、私は三切れ位しか口に出来ない。Q太郎が十切れ位食ってしまうからだ。焼き魚なども、サンマ丸々一匹の、それも骨を外してほぐしたのを所望する。


 焼き魚や刺身が食えぬのなら、菜食主義で行こう。と、野菜メインの食事にすると

「今日は余の好きな魚は無いのか、そなたは何故そのような草など食ろうておるのだ?」と、実に不愉快そうな顔をする。


 そんな訳で高級キャットフードをお代わりした挙げ句、刺身や焼き魚を食うのでQ太郎の体型はあっと云う間にダルマのようになってしまった。


 オヤジ体型である。メタボちっくである。まだ二才にも満たないのに顔などは七年ぐらい生きてるオヤジ猫の面構えである。


 これじゃいかん。

 責任の一端は鮎川にもある。

 てか、鮎川が悪いんじゃん。


 しかし、そんな地獄の日々の中、ひとつの福音を見出だした。


 そう、Q太郎はキャットフードは際限なくお代わりするが、焼き魚や刺身などは無くなると結構素直に諦め、満足した様子で毛繕いなど始める。

 それはつまり、キャットフードは単なる前菜で、メインは“魚”という事なのだ。


 て、事はつまり……

 最初から魚を与えてしまった方が、Q太郎のメタボ対策にもなるし何より私の財布にも優しいんではないか?

 

 試しに、五百グラム二百円程で売られているマグロの中落ちを買い求めて与えてみると、成るほど、適量を食べて満足する。


 しかし、このマグロの中落ち、いつでも売っている訳ではないのが辛い所だ。売っている時は買いだめし、冷凍するなどしているが、きっとスーパーのレジ係はいつも買い物カゴ一杯にマグロの中落ちを持ってくる私の事を見て


「この人どんだけマグロ好きなんだよ(笑)」


 と、思っているに違いない。








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