ナナ嬢の見る夢
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数年前、ウチの近くに出来た住宅地に引っ越して来たOさんが連れて来た猫がナナ嬢だ。
雑種ではあるが、チャコールのリンクスポイントと青い目で、洋猫の血が流れているのかもしれない。シックなお姉さんと云った風情の猫である。
最初はたまに顔を出す程度だったナナ嬢がウチに入り浸るようになったのには(推測だが)訳がある。
一昨年だったと思うが、Oさんが亡くなった。
勿論Oさんの奥さんや息子さんやそのお嫁さんはご健在なのだが、Oさんが一番ナナ嬢を可愛がっていたのだろう。そのOさんがいない。
元々外で飼われていたが、それでもOさんが可愛がってくれるから、辛くなかったのだろう。
Oさんが居ない冬はナナ嬢にとって耐えがたい寒さだったに違いない。
そんな訳でウチに入り浸っている……と思うのだ。
因みにナナ嬢は第三下僕のぬらりひょんの膝の上で寝るのが好きだ。
よりにもよって、こんな骨と皮だけの、年寄りの膝で寝なくてもいいのに。しかし、ぬらりひょんもまんざらではない様子なので放っておいている。人間の女性には全くモテないので、せめて猫にモテて良かったな。ぬらりひょん。
そういえば、亡くなったOさんも痩せていたな。
もしかして、ナナ嬢はOさんの膝で眠っている夢を見てるのかもしれない。




